研究課題/領域番号 |
25286009
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大西 洋 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20213803)
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研究分担者 |
天野 健一 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (30634191)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液体構造 / 原子間力顕微鏡 / 固液界面 / 固体表面 / 炭酸カルシウム / 分子動力学計算 / 国際情報交換 / フィンランド |
研究概要 |
本研究では、固液界面に存在する「構造化した界面液体」の断面構造(界面垂直な平面にそった密度分布)を周波数変調方式の原子間力顕微鏡(FM-AFM)を使って計測する。固体表面が界面液体とどのように構造接続するかを実験によって明らかにすることが目的である。固体と液体の化学組成と分子構造という構造要素(サイズ0.1-1 nm)が、界面液体層の大域構造(サイズ1-10 nm)を規制するメカニズムを分子論的に解明して、複雑系の理解と制御を指向する新世代のサイエンスとテクノロジーにとって意義あるコンセプトを提案したい。 2013年度の研究実績は(1)炭酸カルシウム結晶と水またはアルコール界面、および(2)サリチル酸結晶と有機溶媒界面を対象として、固液界面の構造接続をFM-AFMを用いて観測したことである。以下に各々の概要を述べる。 (1)炭酸カルシウムはセメント・真珠・骨などの主要成分であり人間生活に密着した無機化合物である。常温常圧で最も安定な結晶であるカルサイト(方解石)の(104)結晶面と、水および2-プロパノールの界面をFM-AFMで計測した。主な実験は2012年度に完了しており、2013年度には測定結果の解釈と学術論文発表をおこなった。カルサイトに接する液体水がこれまで報告された界面水のなかで最も明瞭な液体構造を形成することを指摘して、その原因がカルサイトの高いイオン性、または結晶表面の著しい凹凸構造にあることを提案した。 (2)固体表面の凹凸が界面液体の構造化を促進することを証明するために、著しい凹凸を呈するがイオン性をもたないサリチル酸結晶と有機溶媒(デカン・ヘキサデカン・フェニルオクタン・OMCTS)の界面をFM-AFMで計測した。予想外に強い界面液体の構造化を観測したので、構造化要因を明らかにすべくAdam Foster教授(海外共同研究者)らと分子動力学シミュレーションによる共同研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)カルサイト結晶については前年の計測結果を解釈することで予定どおりの成果をあげることができた。(2)サリチル酸結晶と有機溶媒の界面については、予想外に明瞭な界面液体構造化を観測し、海外共同研究者との共同研究を予定より早期に実施することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)カルサイト結晶と水溶液界面については当該分野に経験ある博士研究員を2014年度に雇用して、バイオミネラリゼーションのメカニズム解明を目指した研究を展開する。(2)サリチル酸結晶については分子サイズの異なる有機溶媒を用いた実験を進めると共に、海外共同研究者とのシミュレーション研究によって、固体表面の凹凸が界面液体構造に転写するメカニズムを解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度交付申請書に記載した支出予定のうちアクティブ除振台一台を購入する必要なくなった。研究の進捗にともなってH26年度に博士研究員一名を雇用する必要が生じたため、H25年度残高を26年度に繰越して、26年度配分と合算して、博士研究員人件費に充てることとしたため。 学術推進員(博士研究員)一名の人件費としてH26年度中に全額を使用する。
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