本研究では、ナノカーボン機械共振器において非線形振動の発生機構解明と制御の実現を目的とし、実験、分子動力学計算の両面から、機械的振動の非線形応答を明らかにし、これらを利用したQ 値の制御の可能性について検討した。 昨年度までに蓄積したデータをもとに、強い非線形効果が期待できる両持ちハリ構造のグラフェンおいて光熱誘起効果と機械的に誘起した非線形振動をカップリングさせ新たな振動制御方法への展開を図った。その結果、非線形振動領域において、定常光照射の波長を変化させ共鳴光の効果を確認したところ、従来報告されていないような振幅が増大するにもかかわらず非線形性が弱くなる振動モードの遷移を見出した。また、ナノチューブ・グラフェン複合系においてミクロな観点から分子動力学計算により人為的な機械的ポテンシャル井戸を形成することで極めて小さな振動においても非線形性が容易に発現することを見出した。さらに、昨年度見出した帯電電荷による非線形の起源やQ値の増強に関して、実験結果を説明できる定性的な理論モデルを提案した。また、この方法の制御性を高めるために新奇なデバイス構造を提案し、理論的な解析によりその動作が説明可能であることを示した。昨年度、研究の過程で見出したグラフェンントランジスタの異常な光応答に関して、定性的なモデルを提案し、電極界面における電荷トラップがこれに重要な働きをしていることを明らかにした。
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