研究課題/領域番号 |
25286014
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
二又 政之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20344161)
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研究分担者 |
石川 満 城西大学, 理学部, 教授 (70356434)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面増強ラマン / 近接場ラマン / 吸着状態 / 一分子検出 / 金属ナノ粒子 / ギャップモード |
研究概要 |
(1) 単一分子感度ラマン分光の確立:銀ナノ粒子(AgNP)表面にPMBA及びPATPの単分子層を形成し、分散した水溶液のpHを制御することで、カルボキシ基をプロトン解離させ、溶液中の種々の金属イオンを捕捉し、同時にカルボキシ基の-COO-伸縮振動バンドの波数の違いから区別して検出できることを見出した。同様にアミノ基へのプロトン付加を利用して、溶液中のアニオンを捕捉し識別できることを初めて見出した。この手法により、溶液中のイオンの効率的な捕捉と同時に、水和等存在状態を解析できることを見出した。金ナノ粒子にDNA及びRNA塩基を吸着させ、高感度で状態分析できることを見出した。このとき、一級アミノ基を有するアデニン、グアニン、シトシンが、他の塩基に比べてより低濃度で吸着することや、ラマンスペクトルの理論解析により、吸着状態を解析した。 (2) SERSデバイス形成:ギャップモードについて、吸着分子と金属ナノ粒子の固定機構について、種々のチオール分子を用いて解析した結果、立体障害のないアルカンチオール、環状チオールなどがvan der Waals力及び静電的相互作用で金属ナノ粒子を固定でき、ギャップモードを利用して10^8倍のラマン増強が得られることを見出した。 (3) 固液界面のナノ反応解析:金属ナノ粒子を蒸着法等で近接場プローブ先端に固定・形成した。種々の金属基板と分子を介して固定した金属ナノ粒子間のギャップモードについて、ギャップモード増強で1粒子直下の10^8-10^9倍のラマン信号増強を実証した。顕微鏡試料ステージ上のスキャナヘッドにプローブを固定し、金・銀のほか白金等の薄膜上のチオール分子を用いて、チップ近接/分離時のラマン増強度変化を測定するなど、研究を着実に進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定よりも金属ナノ粒子を用いるギャップモードラマン分光に関して、共鳴条件や増強電場の金属材質、粒子サイズ、基板材質依存性などで、理論解析と実験解析に関して、ほかで行われていない詳細な点について、大きな進展がみられた。 flocculation SERS法に関しても、溶液中金属イオンの種類の識別や、高効率での捕捉に関して、応用面からみて重要な結果が得られた。次年度以降の研究の推進により、重金属除去、放射性金属イオン除去に向けた応用が期待できる状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
特に近接場ラマン分光に関して、これまでに進めてきたAFM方式とともに、独自の光ファイバ方式についても、着実に進めることで、固液界面のナノラマンイメージング法の確立と、実用系への適用を効率的に進める計画である。特に重要な金属ナノ粒子のチップや光ファイバ先端への固定法に関して、一般に行われている蒸着法ではなく、予備的に検討している独自の化学的な手法により、効率的な金属ナノ粒子プローブを開発し、世界初の金属ナノ粒子プローブをギャップモードと複合する計画である。これにより一般的な金属基板表面で、一分子感度と数ナノメータの空間分解能を持ったナノラマンイメージングの実現が期待できる。
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