研究課題/領域番号 |
25286014
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
二又 政之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20344161)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面増強ラマン / 一分子感度 / ナノラマンイメージング / 固液界面 / 吸着状態分析 |
研究実績の概要 |
(1)単一分子感度ラマン分光の確立:「flocculation-SERS分光法」を、DNA塩基や各種官能基を溶液側末端に持つチオールの他、金属カチオンやヌクレオチド、アミノ酸に適用し、これまで不可能な検出感度レベルでの状態分析を実現した。 (2)固液界面のナノ反応解析;(1)の金属ナノ粒子間の代わりに、AFMカンチレバー先端に固定した金属ナノ粒子プローブと金属基板間のギャップモードを用いたナノラマンイメージング法の開発を進めた。 1-1)プローブ先端へのナノ構造形成について、FDTD計算により、銀ナノ粒子1個の固定では、現実的に利用しにくい400 nm付近に巨大な電場増強が得られるが、長波長側では急激な電場の減衰が見られた。それに対して、チップ全体を覆う銀薄膜形成により、400-800 nmの幅広い波長範囲で、単一分子感度ラマン検出を与える共鳴が得られた。実験的にこの点の実証を進めた。1-2)ギャップモードに関して、任意の金属基板上で、十分な大きさの金ナノ粒子または銀ナノ粒子を用いることで、一分子感度が実現できることを理論計算により予測し、実験的に確かめた。また、シリコンなどの高屈折率非金属基板表面でも同等のラマン増強が得られることを見いだした。 2)顕微鏡集光系の高効率化、AFMスキャナと試料が独立可動なX-Yステージを試作し、実用性を確かめた。全反射配置でギャップモードを励起する光学系を用いて、金属薄膜上の金属ナノ粒子の被覆率の低下と共に、より大きなラマン信号の増強が得られることを見いだした。これは、伝搬性表面プラズモンとギャップモードの複合によるもので、ナノラマンイメージング配置で最大の感度が得られることを意味している。これらの成果をもとに、ナノラマンイメージング測定を直実に進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りの達成である。それに加えて、予想していなかった伝搬性プラズモンとギャップモードの複合の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
プローブとして、AFMカンチレバーに加えて、先鋭化光ファイバへの適用を検討する。この理由は、(1)光ファイバはそれ自身が、効率的な集光系として働く可能性があることと、(2)全反射型配置で光ファイバを用いる方式(コレクションモード)の方が、背景となる妨害光を抑制できるため、微弱な信号光を効率的に検出できる可能性があることに加え、(3)以前先鋭化光ファイバ方式の近接場分光装置を構築した経験があり、基礎技術を有していることなどである。光ファイバ式は、ナノラマンイメージングの新しい光学配置として期待できる。
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