研究課題/領域番号 |
25286015
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
小田 勝 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30345334)
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研究分担者 |
座古 保 独立行政法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 専任研究員 (50399440)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 量子ドット / フレンケル励起子 / 1次元配列構造 / DNA / 自己組織化 |
研究概要 |
平成25年度には,下記の項目1~3を実施した。 1.極微小量子ドット(QD)の合成法の開発: 半導体材料によるフレンケル励起子の人工創成に必要な,有機色素分子並みに小さな直径2 nm 以下の寸法を持つ極微小QDの合成法の開発・改良に取り組んだ。研究代表者が過去に手がけたQDの化学合成法である「QD の原料となる有機金属化合物を,溶融した有機配位溶媒中に注入し,その時に生じる熱分解反応を用いて結晶成長を行う手法」を改良することで,極微小QDの合成に成功した。 2. DNA によるQD の1次元配列法の開発: 項目1により合成した極微小QD を,1 nm以下の間隔で1 次元的に配列する新技術の開発に向け,予備実験で手応えを得た「QD表面にオリゴDNAを結合し,DNAの結合特性を利用してそのQD を配列化する手法」の発展・改良に取り組んだ。本年度は特に,QDを近距離で配列するために適したDNAの設計,及び,そのDNAを用いて配列化を行う作製条件の最適化を進めた。 3.顕微発光計測システムの整備: QD の1 次元配列構造でフレンケル励起子が実現すると,有機会合体との類推から,吸収・発光スペクトルの先鋭化と赤シフト,配列の軸に沿った直線偏光発光,発光寿命の高速化などの特性が出現すると期待できる。本課題では,これらの発光特性の高精度・高効率な検出のため,試料の中に配列間隔や配列数のばらつきによる光学特性の不均一広がりが存在する状態であったとしても,個々の配列構造が持つ真の光学計測をそれぞれ抽出可能な「顕微発光計測」を実施する。本年度は,この測定に向けて,これまで研究代表者が整備した顕微発光計測システムに,新たに波長可変レーザーを組み込んだ光学系の整備を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載した,項目1と3については当初の予定通り達成できた。項目2については,やや遅れが生じており,本年度も引き続き取り組む予定である。項目2がやや遅れた理由は,昨年度5月に研究代表者が所属機関を異動したことに伴い,研究の実施に必要な,多数の精密機器(試料作製・評価装置)の移設・調整に時間を要したためである。現在は主要な装置の移設・調整は完了しており,急速に遅れを取り戻しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,下記の項目1,2を実施する。 1.DNAを利用したQDの1次元配列法の確立: 前年度に開発を進めた,QDの配列化方法の最適条件を探索するとともに,並行して,試料作製後に良質な配列構造のみを抽出するための分離精製技術の開発を行うことにより,より良質な配列構造を得る方法を見いだす。 2.QDの一次元配列構造に対する顕微発光特性の測定: 前年度に整備を進めた顕微発光計測システムを完成させる。さらに,半導体材料によりフレンケル励起子が人工創成できることを実証するため,この計測システムを用いて,項目1で用意した良質な配列構造に対する,励起・発光スペクトル測定,および,発光偏光計測,発光寿命計測を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者が平成25年5月に所属機関を異動したことに伴い,研究を進行させる順序を一部変更した。そのため予算額と使用額で若干の差が生じた。 順序を入れ替えた研究を実施することにより,当初の予定どおりの金額を使用する予定である。
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