研究課題/領域番号 |
25286017
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
津田 明彦 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20359657)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超分子 / 音化学 / 分子集合体 / 有機化学 |
研究実績の概要 |
分子スケールの世界では、熱運動する媒質分子の不規則な衝突によって引き起こされるブラウン運動が支配的な環境であるため、小さな分子がそれに打ち勝って溶媒分子の巨視的な流れに沿って整列することは極めて困難である。しかし、分子や分子集合体が大きくなれば、溶媒分子のブラウン運動の影響が小さくなり、溶液の流れを感じる取ることができるようになる。微弱な音波振動が引き起こす液体分子の流れを感じ取ることができるような分子や分子集合体の開発を目指して、我々は、(1) 直鎖構造を有するポルフィリンポリマーからのラダー型ポリマー超分子二重鎖の創製、および (2) ペリレンビスイミド誘導体を用いる超分子ナノファイバーの創製に関する研究に取り組んできた。以下に研究の概要を述べる。
(1)複数の高分子を集合化させることで一本鎖の高分子よりも強固で直線性の高い多重鎖分子集合体の開発を企てた。らせん構造を持つ高分子集合体が注目を集める一方で、非らせん型、すなわち直線形のラダー型高分子集合体はほとんど注目されていない。ラダー型高分子集合体の構築には二重らせん高分子集合体と比較して、直線性が高くて、硬い高分子を用いる必要があると考えられる。我々は、剛直な直鎖状構造を有するmeso-meso結合亜鉛ポルフィリン多量体をエチニレン架橋型ビピリジンと混合すると、より強固で直線性の高いラダー状超分子二重鎖錯体が形成することを見出した。
(2) 長いアルキル鎖とアミド部位を有するペリレンビスイミド(PBI)誘導体を合成し、それが溶液中で自己集合して、細くて長い超分子ナノファイバーを形成することを見出した。PBIナノファイバーは音響配向を示し、その配向効率に及ぼすいくつかの構造的要因を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音楽の音で整列するナノファイバーの開発に成功し、その研究成果を論文として発表することができた。本研究成果は、ChemPlusChem 2014, 79, 516に掲載され、掲載雑誌の表紙、ChemistryViews、ワイリー・サイエンスカフェなどでハイライトされた。さらに上記研究は、朝日新聞(2014, 6/28)で大きく紹介された。
新しく開発に成功したmeso-meso結合亜鉛ポルフィリン多量体からのラダー状超分子二重鎖錯体は、熱応答性マクロポーラスゲルを形成することがわかった。本発見は想定外であり、ラダー状超分子二重鎖が新しい機能性マテリアルとしてのポテンシャルを有することを示している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) meso-meso結合亜鉛ポルフィリンポリマーからラダー状超分子二重鎖錯体を構築し、その音響配向挙動を直線二色性(LD)スペクトルから明らかにする。音響配向挙動に対する、ナノファイバーの長さ、太さ、硬さ、直線性、溶媒との親和性などの影響を詳細に調査する。一方、ポルフィリンの中心金属をコバルトなど6配位の金属に置換することで、無限構造を有する超分子ポリマーの構築を行い、その音響配向挙動を調査する。
(2) PBI超分子ナノファイバーの融点、会合定数、そして集合化メカニズムと音響配向の関連性を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
引き続き、合成実験を中心に研究活動を行う必要があるため。また、最終年度において、国内および国外で活発な研究成果発表を行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
実験試薬やガラス器具などの消耗品の購入。国内学会および国際学会などでの研究成果発表の登録費および旅費。
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