本プロジェクトの目的は、グラフェン・ナノアンテナの基本特性およびそのポテンシャルを主に分光学的手法により明らかにし、高効率光電変換デバイス作製に向けた設計指針を確立することである。実際、これまでの研究において、グラフェンナノリボンの遠赤外吸収スペクトルには、グラフェンナノリボンの形状による依存性が存在することを見出している。しかしながら同時に、グラフェンの遠赤外吸収はキャリア密度に大きく依存しており、キャリア密度を制御して分光測定する必要があることもわかった。そこで、グラフェン試料にゲート電圧を印加しながら、遠赤外スペクトル測定することができるように、測定装置の改良をおこなった。具体的には、ゲート電圧を印加しながら遠赤外吸収測定と電流―電圧特性を同時に測定できるように試料ホルダを改良した。 そして、短冊形に成型加工したグラフェンナノリボンを用い、遠赤外吸収測定をおこなった。これまでのグラフェンの測定では、遠赤外ピークがキャリア密度の1/4乗に比例することが知られている。この1/4乗依存性がグラフェンナノリボンにおいて成立するかどうか検証した。グラフェンのような2次元系では1/4乗則が成り立つが、1次元系ではキャリア密度依存性はないことが理論的に示唆されており、リボン形状による依存性測定は非常に興味深い。測定の結果、グラフェンナノリボンのリボン幅が約300nmまでは、キャリア密度の1/4乗に比例しており、それ以下のリボン幅の場合、キャリア密度依存性が急激に小さくなることを見出した。数100nmという長さは、フェルミ波長の数倍に対応し、それ以下になると1次元性を示しだすことを示唆している。 これらの実験事実から、グラフェンナノリボンのプラズモン共鳴について、基礎光学特性を明らかにすることに成功した。
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