研究課題/領域番号 |
25286020
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
関場 大一郎 筑波大学, 数理物質系, 講師 (20396807)
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研究分担者 |
木村 健二 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50127073)
高橋 浩之 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70216753)
尾関 和秀 茨城大学, 工学部, 准教授 (20366404)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 位置敏感半導体検出器 / 水素 |
研究実績の概要 |
現在、我々の高分解能ERDA(反跳原子検出法)では500 keV~1 MeVの酸素ビームをプローブとして用いている。反跳された表面近傍の水素イオンは90°マグネットで曲げられたのち、多価の酸素イオンを除去するための0.5μm厚のマイラ膜を通って位置敏感検出器で検知される。このとき、検出器に入射する水素のエネルギーは100 keV程度しかない。このような低エネルギーの粒子のエネルギー分析は比較的難しいと考え、多チャンネル半導体検出器を試みる前に通常用いている市販の半導体検出器に1 mm幅のスリットを付け、それを直線導入器で移動させることで簡易的な位置敏感検出器として水素の検出を行ってみた。市販の半導体検出器のエネルギー分解能は公証値で約14 keV、我々の実験室での実測では40 keVまで悪くなる。そのため100 keV程度の水素を正しく検知できるかどうかは未知であった。しかしイオン注入型のシリコン検出器では100 mmの移動範囲で水素のエネルギーが線形にシフトしていく様子を明瞭に観察できた。また、X線用のシンプルなCdTe(カドミウム・テルル)検出器でも同様の結果を得ることができた。CdTeでは電極の厚みのみで不感層を制御でき、イオン注入のノウハウが不要であることから将来の多チャンネル化には有利と考えられる。検出器の位置に依存したピーク状のスペクトルを観察できたことで、そのピーク位置からエネルギー的に大きくはずれた信号を迷い粒子その他のノイズと判断することが可能となり、位置敏感半導体検出器の導入により検出感度が2桁向上することを実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検出すべき水素のエネルギーが100 keV程度と、通常のイオンビーム分析で用いられるエネルギー領域に比べて非常に低い値であることは、研究計画当初は見落としていた。このエネルギー領域の水素を検出する際には、検出器の表面近くにある不感層をなるべく薄くしないといけない。今回、市販のイオン注入型のシリコン検出器のうち、不感層が50 nmと極めて高性能のものを試験することで良い結果を得ることができた。しかし同様の性能のものを大面積で多チャンネルにすることはコスト的に難しいことも認識できた。そこで不感層が電極の膜厚でほぼ決まるショットキー型の検出器として普及しているCdTeを試験したところ、高性能のシリコン検出器とほぼ同性能の結果を得た。多チャンネル化が容易なため、今後はCdTeを中心に検出器を実現していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
CdTeといったワイドギャップ半導体を検出器として用いるとき、電極の装着方法としてオーミック・タイプとショットキー・タイプといったオプションがある。どちらも一長一短であり、今後はまず両タイプを単チャンネルの検出器として用いた時にエネルギー分解能などの性能を調べ、有利と判断された方で多チャンネル化を進めていく。また、CdTeは大面積のウエハがないことから小面積の検出器を並べることが想定されるが、CdTeでは検出器の端で性能が異なる傾向が知られている。その原因を特定し、実効的に大面積で均質な多チャンネル検出器を構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
真空消耗品の使用量が予定よりも少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
真空消耗品の購入にあてる。
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