研究課題
格子歪みを使ってグラフェンに伝導(バンド)ギャップを誘起する手法には、(I) 局所歪みで誘起される擬似磁場による電子のサイクロトロン運動を用いる方法、(II) 周期歪みによるバンド変調による方法の2通りがある。今年度は両手法について実験を行った。1)前年度までの研究で、(I)を実現するためにはキャリアの平均自由行程の増大、歪みの空間変化量の増大が必要であることがわかっている。そのための方法として、対称的な表面凹凸のある1対のhBN薄片でグラフェンを挟み込んで歪みを導入する方法を開発した。ここでは、微細加工を施した4枚のhBN膜と1枚のグラフェンを乾式転写法によって精密に積層させる。顕微ラマン分光では、約0.1%の局所歪みが確認され、伝導測定においては、最小コンダクタンスの温度依存性にて、3.2meVのエネルギーギャップが確認された。この大きさは、歪み量から見積もった値と一致する。2)(II)を実現するためにはグラフェンに電極を形成した後に歪みを導入する必要があることが前年度の研究でわかっている。そのための手法として、レジストでできた厚板に貼り付けたグラフェンを周期凹凸構造のある基板上に配置し、電極を形成したのちに厚板を除去して基板の凹凸に対応した歪みを導入する、という方法を考案した。この方法で作製した周期0.6ミクロンの周期歪みを持つグラフェンでは、最小コンダクタンスの温度依存性、電流電圧特性において2.4meVのバンドギャップを観測した。このように、2通りの手法によって、グラフェン電界効果トランジスタ構造における歪み誘起伝導ギャップの観測に世界で初めて成功した。現在、(I)(II)について、ギャップを飛躍的に増大させるための手法を開発している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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