研究課題/領域番号 |
25286038
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
杉岡 幸次 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, ユニットリーダー (70187649)
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研究分担者 |
WU DONG 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 国際特別研究員 (50618775) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フェムト秒レーザー / ナノマイクロファブリケーション / 3次元加工 / ボトルシップ型加工 / バイオチップ / マイクロナノデバイス |
研究実績の概要 |
本研究は、フェムト秒レーザーによるガラス内部3次元加工技術と2光子マイクロ、ナノ光造形技術を融合(ハイブリッドフェムト秒レーザー加工)し、新しいタイプの高機能バイオチップ(ボトルシップ型バイオチップ)作製に応用することを目的とする。近年ガラス3次元加工によるバイオチップの作製は、フェムト秒レーザー加工の重要な応用分野となっている。しかしこれまでは3次元流体構造を形成し、さらに光導波路などの簡単な光学素子を集積化したものしか作製されていない。微小な構造を持つ機能素子の集積化は、バイオチップを高機能化する上で必要不可欠であるが、ガラス3次元加工技術のみでこれを実現することは不可能であり、新たな技術を導入する必要があった。 平成26年度は、前年度に開発したフェムト秒レーザーによりガラス内部に3次元流体構造を形成する技術と、さらに作製した流体構造内部に2光子光造形によりポリマー3次元微小構造体を内包させる技術を融合し、ボトルシップ型高機能バイオチップ作製に応用した。具体的には流体フィルターと流体ミキサー機能を合わせ持つ3次元マイクロポリマー構造体をガラス流体チャネル内に集積化し、異物の除去と液体試料の高効率混合を同時に行う多機能バイオチップの作製に成功した。一方、流体構造内部で行う2光子光造形技術の高度化を図ることを目的とし、フェムト秒レーザー時空間ビーム整形技術の開発を行った。開発した時空間ビーム整形技術により、ガラス内部に3次元等方的な加工解像度で加工ができることを実証した。 今後は、本手法のさらなる高性能化を図るとともに、作製した高機能バイオチップをバイオ研究応用に展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した平成26年度の研究計画は、バイオチップ内部で行う2光子光造形技術の高度化を計ることであり、そのために時空間ビーム整形技術を開発することであった。実際に時空間ビーム整形を行うためのシステムを構築し、ガラス内部3次元加工に展開したところ、3次元等方的な加工解像度を得ることができ、本技術の有効性を実証した。しかし、平成26年度には本技術の2光子光造形への適用までには至らなかった。一方平成25年度に開発したハイブリッドフェムト秒レーザー加工により、平成27年度に実施する予定であった高機能バイオチップの作製を一部すでに実現しており、トータルとしては当初の計画通り概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度に開発したフェムト秒レーザー時空間ビーム整形技術をバイオチップ内部で行う2光子光造形技術に適用し、ハイブリッドフェムト秒レーザー加工のさらなる高度化を計る。 さらに前年度までに開発を行った技術を駆使し、ボトルシップ型高機能バイオチップの作製を行う。作製したバイオチップは、実際のバイオ化学実験に応用する。現在計画している応用例を下記に示す。 (1)3次元ポリマー構造によりマイクロレンズアレイなどの光学素子を作製し、それをガラスマイクロ流体デバイスに集積化することにより、生細胞の検出,計数を光学的手法により並列に行うオプトフルイディクスの作製を試みる。検出確立が低い場合は、生細胞が各マイクロレンズの中心部分を移動するよう、生細胞の移動する方向を制御することのできるセンターパスユニットを組み込むことにより、100%の細胞検出を目指す。 (2)3次元ポイマー構造により生細胞培養用3次元スカフォードや周期や振幅を制御した周期構造をマイクロ流体チャネル内に集積化し、微小領域における生細胞の検出、観察、分析、操作を行う。 実際のバイオ、化学実験を実施するにあたっては、連携研究者として同じ機関に所属する生物学研究者の協力のもと行う。最後に平成27年度は本課題の最終年度にあたるため、研究の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に購入する予定であった「時空間パルス整形システム」は、構成パーツを個別に購入し、自身で組み上げることにより、当初の予定額よりかなり安い金額で構築することができた。一方平成26年度内に、平成27年度に開催される国際会議から招待講演を既に多数依頼されており、その旅費ならびに参加費を賄うために次年度に使用を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に繰り越した研究費は、国際会議で招待講演を行うための旅費ならびに参加費、さらに学術雑誌に研究成果を発表するための掲載料に使用する予定である。物品費は従来の予定額を、予定していたとおり消耗品の購入に用いる。
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備考 |
学術論文や国際会議(特に招待講演)による成果報告において、当初の予想以上の実績が得られている。
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