研究課題
本研究の目的は、強磁性体から半導体への電気的スピン注入を利用し、 (1)エレクトロニクス素子の主要構成材料であるGaAsやInGaAsにおける、電子スピンと核スピンに関するダイナミクスを解明すること、(2)核スピンをナノスケールの空間分解能で制御し、かつ、高感度に検出できる素子を創出すること、さらに、(3)核スピンの量子力学的なコヒーレンスを活用した半導体量子情報デバイスの基盤技術を確立することである。最終年度である平成27年度は、半導体スピン注入技術と核磁気共鳴(NMR)を併用した核スピンのコヒーレント制御の技術を確立し、核スピンを用いた量子ゲート操作の実証を行った。GaAs中の核スピンはいずれもスピン量子数が3/2であるため、外部磁場により4準位系を形成するが、隣接する2つの準位間のエネルギー差に共鳴する振動磁場を照射すると、振動磁場が照射されている間、核スピンはコヒーレントに回転をし続け、その結果、NMR信号はパルス照射時間に対して振動する。この振動はコヒーレント振動(ラビ振動)と呼ばれ、核スピンの量子力学的な重ね合わせ状態の実証となる。試作したGaAs系スピン注入素子において、69Gaの核スピンに対するラビ振動を観測した。これは、スピン注入素子を用いたラビ振動の観測としては世界初の成果である。また、核スピン温度の概念を導入し、核スピンの外部磁場に対する過渡応答を定量的に解析するモデルを確立した。これにより、電子スピン系や格子系、外部磁場と複雑に相互作用する核スピンのダイナミクスを統一的に理解することに成功した。以上により、核スピンの量子力学的なコヒーレンスを活用した半導体量子情報デバイスの実現に向けた重要な基盤技術を創出し、本研究課題の目的を達成した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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