研究課題/領域番号 |
25286041
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
一柳 優子 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90240762)
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研究分担者 |
千本松 孝明 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (70216563)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁性 / ハイパーサーミア / 交流磁化率 / ナノテクノロジー / がん温熱療法 / 局所構造 / DDS |
研究実績の概要 |
本課題における「研究の目的」は、金属塩化物とメタケイ酸ナトリウムの水溶液を湿式混合する独自の製法で磁気ナノ微粒子を生成し、磁気的性質を明らかにし、官能基を修飾しがん細胞選択性を持たせること。さらにこの微粒子をハイパーサーミア(温熱療法)へ応用するために微粒子の交流磁場による発熱特性を評価することであった。 1.特にMn系フェライトMn1-xZnxFe2O4 ( x = 0 ~ 1.0)について、粒径や組成を変化させ、交流磁化率と発熱特性の関係を明らかにした。直流磁化率の測定からは、x=0.2で最も磁化が大きくなることが明らかになった。この組成について交流磁化率の虚数部分χ"の粒径依存性を詳細に分析したところ、18 nmの試料が室温付近にχ"のピークを持つことがわかった。この条件で熱散逸量が最も効果的に働くと考えられる。そこで、交流磁場中での温度上昇を測定すると、予想通り18 nmのものがもっとも発熱し、周波数15 kHz, 交流磁場151 Oeのもとでは200秒で13度ほどの温度上昇を認められた。 2.in votroの実験:上記の最適化した試料を用いて、乳がん細胞の磁気ハイパーサーミア効果の実証を試みた。4種類の乳がん細胞をディッシュに培養し、本微粒子を撒いて交流磁場をかけてハイパーサーミア効果を観察した。直径が約3センチのディッシュを用意し、それを覆うことが可能なコイルを巻き、培養したがん細胞に微粒子を導入し交流磁場を印加したのち、がん細胞の生存率を調べたところ、20%ほどのがん細胞が死滅し、大きなハイパーサーミア効果が確認できた。 3.細胞死のメカニズムの解明 上記でがん細胞の死滅が確認できたが、細胞死のメカニズムを調べるための手法を探索した。アポトーシス・ネクローシス・キットにより試行的実験を行ったところ、ほぼアポトーシスであるようであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.マンガンフェライト(Mn-ferrite)に亜鉛(Zn)をドープすることで、磁気パラメータが向上することが確認できた。ドープ量を詳細に変化させ、組成の全容を明らかにすることができ、トMn1-xZnxFe2O4 ( x = 0 ~ 1.0)の系にてx=0.2で磁化が最大になることをつきとめた。これは、異方性と温度の関係によると考えられる。 2.in vitroの実験を行うことができた。当初、細胞株を購入するか研究協力者からの提供を受ける予定であったが、当実験室にて細胞を培養する技術を確立し、前立腺がん細胞、乳がん細胞についてのハイパーサーミア効果を実証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.前立腺がんと乳がんについては、本微粒子の磁気ハイパーサーミア効果が確認できたが、熱に強いがんも存在する可能性もある。数種類のがん細胞について、再実験などで確認しつつ確固たる結果を導いていくつもりである。 2.in vivo実験へ向けた課題、特に分散性の向上についての解決方法を検討していく。具体的には焼成を行わずに生成する方法や、包囲するSiO2の厚みを変化させ、分散性を分析していく予定である。 3.来年度は最終年度であるため、ハイパーサーミアのみならず、MRIイメージング、CTイメージング、質量分析イメージングなどの応用も同時に考慮しつつ、治療と診断を同時に行うセラノスティクスへ向けた研究へと発展させたいと考えている。
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