研究実績の概要 |
本研究は、pn制御技術を、有機共蒸着膜に直接適用し、セルをドーピングのみで造り込み、高効率を目指す。H26年度、C60:H2Pc(フラーレン:フタロシアニン)共蒸着膜中に、ドーピングのみでpnホモ接合を形成し、n層のドナードーパント(炭酸セシウム)の濃度を50 ppmの一定に保ち、p層のアクセプタードーパント(有機ドーパント(TCNQ誘導体))の濃度を0, 1, 10, 100, 1,000 ppmと系統的に変化させ、光電変換層へのドーピング効果を詳細に調べた。光電変換層へのドーピング効果の研究は世界的にも行なわれた例はない。驚くべきことに、1 ppmの極微量ドーピングでセル特性が大きく影響を受けることが分った。すなわち、0から1 ppmで、セルバルク全体に均一に起こる、多数キャリア(ホール)効果によるセル抵抗低下と曲線因子増大が連動して起こることを確認した。1から10 ppmで内蔵電界形成(pn接合形成)による光電流増大が連動して起こることを確認した。少数キャリア拡散距離も300 nm以上となり、500 nmの厚さのセルバルク全体が光電流発生に寄与していることを確認した。10から100 ppmで、ドーパントであるイオン化アクセプター散乱によるキャリア移動度低下のために、光電流減少が連動して起こることが明らかになった。このように、光電変換層へのドーピング効果をppmレベルの濃度領域に分けて、詳細に解明することができた。なお、C60:6T(フラーレン:セキシチオフェン)共蒸着中に対しても、ドーピングのみで、最単純n+pホモ接合を形成し、p層のアクセプター濃度を0,1,10,100 ppmと系統的に変化させた結果、上記メカニズムをサポートする、本質的に同じ結果を得ることができた。セル特性を向上させるには、10 ppm以下の極微量ドーピングを、キャリア移動度の高い有機半導体薄膜に応用する必要があると考えている。
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