研究課題/領域番号 |
25286049
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
若原 昭浩 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00230912)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘテロエピタキシー / Si基板 / III-V-N混晶 / 分子線エピタキシー / 組成不均一性制御 / 非輻射再結合中心 |
研究実績の概要 |
昨年度に見出した表面窒化と際埋込成長によるGaAsN成長法が発光効率向上と組成不均一の抑制に有効であることのメカニズムについて検討を行った。その結果、以下の知見が得られた。 (1)窒化後の成長中断時間を長くするとN組成は減少するものの、組成均一性が改善し、温度昇汞が可改善できる。(2)GaAs埋込層の表面平坦性が、N取り込み、特に不要なNクラスタの取り込み抑制に大きく関係している。(3)PLの解析より、成長中断時間を長くすると、同じN組成であっても発光領域の電子温度上昇が大幅に低下できることから、非輻射再結合中心の濃度が大幅に低減できていることが分かった。(4)Si基板上への成長で必要となる微傾斜基板状の成長に於いて、N取り込み効率の変化は見られなかった。以上により、表面窒化によるN取り込みはステップ端ではなくテラス上での安定Nクラスタが関与していることが分かった。 実デバイスで求められる歪み補償構造の実現のため、GaPNおよびGa(As)PN成長時のN取り込み効率の基板温度およびV/III比依存性を詳細に調べ、As系に対して550℃以上の高温にてV/III比を5程度と大きく低減したGaPNに準拠した条件で高品質なGaAs(P)Nが得られる事を明らかにし、GaPN/GaAsNおよびGaPN/GaAsPN歪み補償量子井戸を実現した。 Nラジカルセルにのマッチングボックスを自動化し、実際のレーザ構造で必要とされる厚いGaAsNおよびGaPNクラッド層の成長が高い再現性をもって得られる事を確認した。 以上により、従来の連続成長とは異なる高温における成長層表面に窒化とそれに引き続くGaAsによる埋込再成長を用いたGaAsN成長技術を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の検討内容を全て実行し、低温PLの解析より発光領域の電子温度推定を行った結果、当初予想していた通り発光強度改善が非輻射再結合中心の低減に寄ることが明らかに出来た事に加えて、本手法が結晶性、特に非複写再結合中心の評価指針として有効であることが確認出来た。 また、従来のIII-V=N混晶の成長条件として一般的に用いられている500℃以下の低温ではなく、本課題で提案している政庁法にて、600℃付近の高温で必要な高いN組成が得られ、かつ、高品位の結晶が有られること、ステップ端ではなくテラス状に形成されたNクラスタが特性改善に有効であることなど、これまでのIII-V=Nの成長では得られていなかった新たな知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成長は、無添加の活性層の高品質化を中心として進めてきたが、レーザ実現に向けて、活性層の光学利得の評価、本課題で提案している結晶成長法を用いて、ドーピングを行った際の課題、キャリア閉じ込め構造の検討が必要である。 光閉じ込め構造の実現には、低屈折率の格子整合系材料の開発が必要である。kouhoとして考えているAlGaPNの基礎的な成長条件は、これまでの予備検討である程度把握しているが、組成均一性の高い厚結晶を実現し、デバイス構造設計に必要な光学定数、ドーピング時の電気的特性などの基礎物性値の確定を行う必要がある。 来年度には、この2点を中心に検討を進めていく。
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