本研究では、Si基板上に格子整合するIII-V-N混晶を無転位で成長する技術を基に、Si基板上のレーザ実現に向けた基盤技術の開発を目的とした。研究期間内で以下の取り組みを中心に検討を行った。 (1)GaAsN量子井戸活性層の非輻射再結合低減のため、GaAs表面の窒化により熱的に安定な窒素クラスタを形成し、これをGaAsで埋め戻す疑似混晶の成長を行い、N組成与良気と非輻射再結合中心の量について検討を行った。550~600℃という高温で成長することに加えて、窒化時および埋込成長直前の表面超構造が(3×)構造を示さない表面状態を保つことで、N組成揺らぎの大幅な改善と、非輻射再結合を大幅に低減できることを見出した。 (2)発光波長の長波長化のためのGaAsPNクラッド層の組成制御技術としては、P2、As2を用い、且つ高温(~550℃)、低III/V比(~4)で成長を行う事で、成長後のアニール無しにPL発光の得られるAs組成~20%、N組成6%程度のGaAsPN層が得られることを明らかにした。 (3)GaAsPNクラッド層へのドーピング技術およびドナ-活性化率の検討では、上記(2)の条件にて、as grown試料に於いても10^16~10^18cm-3のキャリア濃度制御が出来る事、成長後のアニールにより、ドナ-の活性化率が30%とGaPと同程度まで向上できることを示した。 以上を踏まえて、GaAsPNによるpin構造をSi基板上に無転位で実現し、逆方向リーク電流密度も10nA/cm2と良好なデバイスを得る事に成功した。
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