固相ゲル中結晶化法をベースとした複合体結晶構造解析の革新的技術開発

2015 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 25286051
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 杉山 成 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90615428)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: 結晶工学 / 結晶成長 / 難水溶性 / 凝固ゲル / 創薬スクリーニング / 浸漬 / 脂質結合タンパク質 / 脂肪酸

研究実績の概要

凝固ゲル中結晶化法は、ゾルから強度を持った凝固ゲル中にタンパク質を育成させる世界で初めてのタンパク質結晶化技術である。本方法の特徴は、タンパク質結晶の機械的強度を飛躍的に向上させ、その結果として、高濃度の塩溶液や有機溶媒に対する浸透圧による損傷耐性を実現させたことにある。本研究では、従来法では実現できなかった、難水溶性化合物の溶解した高濃度有機溶媒へ、凝固ゲル中で育成させたタンパク質結晶を浸漬することにより、容易に複合体結晶を作製できる新規技術開発を目的としている。最終的に、本方法の特徴を活かし、高濃度有機溶媒に溶けた種々の難水溶性の脂肪酸リガンド溶液へ、脂肪酸結合タンパク質（FABP）の結晶を浸漬し、得られた複合体結晶を精密に構造解析することで、これまで未解明であった脂肪酸分子認識の構造基盤とその生理的役割を解明することを目指した。本年度に実施した実験結果については、以下の通りである。
本浸漬技術をFABPに適用した。その結果、FABPの活性部位に結合している種々の飽和脂肪酸（C8:0、C10:0、C12:0、C14:0、C16:0、C18:0）の活性構造を観察することができた。脂肪酸の全炭素原子は、非常に鮮明な電子密度を示し、原子レベルでアルキル鎖をトレースすることは非常に容易であった。これらの脂肪酸は極低温環境下ではフレキシブルな構造はとっておらず、安定したほぼ一定の活性配座をとっていることが初めて明らかとなった。異なる鎖長をもった飽和脂肪酸の結合によって、FABPの全体構造は、ほとんど変化しないことも明らかとなった。このことは、FABPの活性部位の体積は、飽和脂肪酸の種類によって全く変化しないことを示しており、誘導適合での認識は起こっていないことを示している。したがって、FABPの脂肪酸認識は、活性部位を形成しているアミノ酸側鎖と水素結合ネットワークを形成している水分子が主に関与していると考えられた。

現在までの達成度 (段落)

27年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

27年度が最終年度であるため、記入しない。

次年度使用額が生じた理由

27年度が最終年度であるため、記入しない。

次年度使用額の使用計画

27年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] Genetically engineered monomeric streptavidin for designing a new detection systems based on monovalent biotin interaction (2016)
  • 著者名/発表者名: Osamu Hiraoka, Takuya Terai, Moe Kohno, Shigeru Sugiyama
  • 雑誌名: The ShujitusUniversity Jounal of Pharmaceutical Sciences 巻: 3 ページ: 16-26
  • 査読あり
• [雑誌論文] Development of Protein Seed Crystals Reinforced by High-Strength Hydrogels (2015)
  • 著者名/発表者名: Shigeru Sugiyama, Noriko Shimizu, Keisuke Kakinouchi, Osamu Hiraoka, Hiroyoshi Matsumura, Hiroshi Y. Yoshikawa, Yoshinori Takahashi, Mihoko Maruyama, Masashi Yoshimura, Hiroaki Adachi, Kazufumi Takano, Satoshi Murakami, Tsuyoshi Inoue, Michio Murata, and Yusuke Mori
  • 雑誌名: Cryst. Eng. Comm. 巻: 17 ページ: 8064-8071
  • DOI: 10.1039/c5ce00844a
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Artificial Ligands of Streptavidin (ALiS): Discovery, Characterization, and Application for Reversible Control of Intracellular Protein Transport (2015)
  • 著者名/発表者名: Takuya Terai, Moe Kohno, Gaelle Boncompain, Shigeru Sugiyama, Nae Saito, Ryo Fujikake, Tasuku Ueno, Toru Komatsu, Kenjiro Hanaoka, Takayoshi Okabe, Yasuteru Urano, Franck Perez, and Tetsuo Nagano
  • 雑誌名: J. Am. Chem. Soc. 巻: 137 ページ: 10464-10467
  • DOI: 10.1021/jacs.5b05672
  • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Bioactive structure of membrane lipids and natural products elucidated by a chemistry-based Approach (2015)
  • 著者名/発表者名: Michio Murata, Shigeru Sugiyama, Shigeru Matsuoka, and Nobuaki Matsumori
  • 雑誌名: Chemical Record 巻: 15 ページ: 675-690
  • DOI: 10.1002/tcr.201402097
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Spiral Growth Can Enhance the Both of Normal Growth Rate and Crystal Quality in Tetragonal Lysozyme Growth under a Forced Solution Flow (2015)
  • 著者名/発表者名: Yuki Hayashi, Mihoko Maruyama, Masashi Yoshimura, Shino Okada, Hiroshi Yoshikawa, Shigeru Sugiyama, Hiroaki Adachi, Hiroyoshi Matsumura, Tsuyoshi Inoue, Kazufumi Takano, Satoshi Murakami, and Yusuke Mori
  • 雑誌名: Cryst. Growth Des. 巻: 14 ページ: 4278-4284
  • DOI: 10.1021/cg500484e
  • 査読あり
• [雑誌論文] A Comparative Analysis of Microgravity and Earth Grown Thermostable T1 Lipase Crystals Using HDPCG Apparatus (2015)
  • 著者名/発表者名: Raja Noor Zaliha Raja Abd Rahman, Mohd. Shukuri Mohamad Ali, Shigeru Sugiyama, Thean Chor Leow, Tsuyoshi Inoue, Mahiran Basri, Abu Bakar Salleh and Hiroyoshi Matsumura
  • 雑誌名: Protein Pept. Lett. 巻: 22 ページ: 173-179
  • DOI: 10.2174/0929866521666141019193604
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Preliminary X-ray analysis of the binding domain of the soybean vacuolar sorting receptor with a sorting determinant of seed storage protein (2015)
  • 著者名/発表者名: Nobuyuki Maruyama, Tomoriho Goshi, Shigeru Sugiyama, Mayumi Niiyama, Hiroaki Adachi, Kazufumi Takano, Satoshi Murakami, Tsuyoshi Inoue, Yusuke Mori, Hiroyoshi Matsumura and Bunzo Mikami
  • 雑誌名: Acta Crystallogr., F 巻: 71 ページ: 132-135
  • DOI: 10.1107/S2053230X14027484
  • 査読あり
• [学会発表] フェムト秒レーザーアブレーションを用いた成長機構転換によるタンパク質結晶の高品質化 (2016)
  • 著者名/発表者名: 冨永勇佑、丸山美帆子、吉村政志、杉山成、安達宏昭、塚本勝男、松村浩由、高野和文、村上聡、井上豪、吉川洋史、森勇介
  • 学会等名: 第63回応用物理学会春季学術講演会
  • 発表場所: 東京工業大学大岡山キャンパス（東京）
  • 年月日: 2016-03-19 – 2016-03-22
  • 招待講演
• [学会発表] Growth of Protein Crystals in High-Strength Hydrogels (2015)
  • 著者名/発表者名: S. Sugiyama
  • 学会等名: 3rd International Picobiology Institute Symposium
  • 発表場所: Center for Advanced Science and Technology (CAST)
  • 年月日: 2015-12-08 – 2015-12-09
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] L-アミノ酸酸化酵素の構造に基づく基質認識機構と反応特異性 (2015)
  • 著者名/発表者名: 伊藤菜奈子、浅田貴大、村上佳穂、杉山成、川口辰也、赤地周作、北野量、田村隆、稲垣賢二、今田勝巳
  • 学会等名: 第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学会大会合同大会（BMB2015）
  • 発表場所: 神戸ポートピアホテル
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] 創薬スクリーニングに向けた難溶性化合物との複合体結晶作製技術 (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉山成・垣之内啓介・高野和文・松村浩由・安達宏昭・丸山美帆子・吉川洋史・高橋義典・吉村政志・村上聡・井上豪・村田道雄・森勇介
  • 学会等名: 第45回結晶成長国内会議（NCCG-45）
  • 発表場所: 北海道大学学術交流会館
  • 年月日: 2015-10-19 – 2015-10-21
• [学会発表] ゲル化タンパク質溶液へ撹拌操作による結晶核発生数の制御 (2015)
  • 著者名/発表者名: 丸山美帆子，林佑紀，吉川洋史，岡田詩乃，杉山成，小泉晴比古，橘勝，安達宏昭，松村浩由，井上豪，高野和文，村上聡，吉村政志，森勇介
  • 学会等名: 第45回結晶成長国内会議（NCCG-45）
  • 発表場所: 北海道大学学術交流会館
  • 年月日: 2015-10-19 – 2015-10-21
• [学会発表] ゲル化タンパク質溶液へのフェムト秒レーザー集光による核発生の空間制御 (2015)
  • 著者名/発表者名: 山形眞，丸山美帆子，冨永勇佑，吉川洋史，杉山成，岡田詩乃，高橋義典，安達宏昭，高野和文，村上聡，井上豪，松村浩由，吉村政志，森勇介
  • 学会等名: 第45回結晶成長国内会議（NCCG-45）
  • 発表場所: 北海道大学学術交流会館
  • 年月日: 2015-10-19 – 2015-10-21
• [学会発表] 広範な結晶化条件に適応した新規凝固ゲル中結晶化法 (2015)
  • 著者名/発表者名: 垣之内啓介, 高野和文, 村上聡, 安達宏昭, 丸山美帆子, 吉川洋史, 高橋義典, 吉村政志, 松村浩由, 井上豪, 村田道雄, 森勇介, 杉山成
  • 学会等名: 平成27年度日本結晶学会年会
  • 発表場所: 大阪府立大学
  • 年月日: 2015-10-17 – 2015-10-18
• [学会発表] 創薬加速に向けた難溶性低分子複合体結晶作製の革新的技術開発 (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉山成、垣之内啓介・石田英子・松村浩由・安達宏昭・高野和文・丸山美帆子・吉川洋史・高橋義典・吉村政志・村上聡・井上豪・村田道雄・森勇介
  • 学会等名: 第64回高分子討論会
  • 発表場所: 山形県仙台市 東北大学川内キャンパス
  • 年月日: 2015-09-15 – 2015-09-17
• [学会発表] ゲル化タンパク溶液におけるフェムト秒レーザー誘起核発生の空間制御 (2015)
  • 著者名/発表者名: 山形眞，丸山美帆子，冨永勇佑，吉川洋史，杉山成，岡田詩乃，高橋義典，安達宏昭，高野和文，村上聡，井上豪，松村浩由，吉村政志，森勇介
  • 学会等名: ゲル化タンパク溶液におけるフェムト秒レーザー誘起核発生の空間制御
  • 発表場所: 名古屋国際会議場（愛知)
  • 年月日: 2015-09-13 – 2015-09-16
• [学会発表] 膜蛋白質－膜脂質の相互作用解析を目指した重元素化脂質の利用 (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉山成
  • 学会等名: 第53回日本生物物理学会年会シンポジウム
  • 発表場所: 金沢大学角間キャンパス（石川県、金沢市）
  • 年月日: 2015-09-13 – 2015-09-15
  • 招待講演
• [学会発表] 難溶性化合物とタンパク質との相互作用解析へ向けた新規技術開発 (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉山成, 垣之内啓介, 松村浩由, 安達宏昭, 高野和文, 丸山美帆子, 高橋義典, 吉川洋, 吉村政志, 村上聡, 井上豪, 村田道雄, 森勇介
  • 学会等名: 第53回日本生物物理学会年会
  • 発表場所: 石川県金沢市 金沢大学角間キャンパス
  • 年月日: 2015-09-13 – 2015-09-15
• [学会発表] 難溶性化合物とタンパク質との複合体結晶解析へ向けた新しい取り組み (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉山成
  • 学会等名: 大阪大学蛋白研セミナー
  • 発表場所: 大阪大学蛋白質研究所 1階講堂（大阪）
  • 年月日: 2015-08-27 – 2015-08-28
  • 招待講演
• [学会発表] SPIRAL GROWTH OF PROTEIN CRYSTALS INDUCED BY FEMTOSECOND LASER ABLATION (2015)
  • 著者名/発表者名: Y. Tominaga, M. Maruyama, H. Yoshikawa, Y. Hayashi, S. Nakayama, Y. Takahashi, S. Sugiyama, H. Adachi, H. Matsumura, K. Takano, S. Murakami, T. Inoue, M. Yoshimura, Y. Mori
  • 学会等名: 20th American Conference on Crystal Growth and Epitaxy (ACCGE-20)
  • 発表場所: Big Sky, Montana, USA
  • 年月日: 2015-08-02 – 2015-08-07
  • 国際学会
• [学会発表] Protein crystallization with increased mechanical stability by using a semi-solid hydrogel combined with the stirring technique (2015)
  • 著者名/発表者名: M. Maruyama, Y. Hayashi, M. Yoshimura, H. Y. Yoshikawa, S. Okada, S. Sugiyama, H. Adachi, H. Matsumura, T. Inoue, K. Takano, S. Murakami, and Y. Mori
  • 学会等名: 20th American Conference on Crystal Growth and Epitaxy (ACCGE-20)
  • 発表場所: Big Sky, Montana, USA
  • 年月日: 2015-08-02 – 2015-08-07
  • 国際学会
• [学会発表] L-リシン酸化酵素基質複合体の結晶構造 (2015)
  • 著者名/発表者名: 近藤裕輝, 伊藤菜々子, 杉山成, 川口辰也, 天野万里, 新屋敷健悟, 日下部均, 田村隆, 稲垣賢二, 今田勝巳
  • 学会等名: 第15回蛋白質科学会年会
  • 発表場所: 徳島市あわぎんホール
  • 年月日: 2015-06-24 – 2015-06-26
• [学会発表] 広範な結晶化条件に適応した新規凝固ゲル中結晶化法 (2015)
  • 著者名/発表者名: 垣之内啓介, 高野和文, 村上聡, 安達宏昭, 丸山美帆子, 吉川洋史, 高橋義典, 吉村政志, 松村浩由, 井上豪, 村田道雄, 森勇介, 杉山成
  • 学会等名: 第15回蛋白質科学会年会
  • 発表場所: 徳島市あわぎんホール
  • 年月日: 2015-06-24 – 2015-06-26
• [産業財産権] 重原子化化合物、膜タンパク質の結晶化を促進するための組成物、および該組成物を用いた膜タンパク質の構造解析方法 (2016)
  • 発明者名: 杉山成、花島慎弥、村田道雄、井上豪、斎木悠、島田真典、松森信明
  • 権利者名: 杉山成、花島慎弥、村田道雄、井上豪、斎木悠、島田真典、松森信明
  • 産業財産権種類: 特許
  • 産業財産権番号: 2016-64669
  • 出願年月日: 2016-03-29