研究課題/領域番号 |
25286054
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤ノ木 享英(梅田享英) 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (10361354)
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研究分担者 |
小杉 亮治 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進パワーエレクトロニクス研究センター, 主任研究員 (10356991)
原田 信介 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進パワーエレクトロニクス研究センター, 研究チーム長 (20392649)
岡本 光央 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進パワーエレクトロニクス研究センター, 主任研究員 (60450665)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 炭化ケイ素 / MOSFET / MOS界面 / しきい値電圧 / チャネル移動度 / 電子スピン共鳴分光 / ESR / EDMR |
研究実績の概要 |
H26年度の研究は、4H-SiCのSi面窒化処理とC面水素処理の評価にフォーカスし、以下のような結果を得た。 Si面窒化処理: "窒素ドーピング濃度"の定量を電子スピン共鳴分光(ESR)法で行った。スタンダードな窒化処理条件(50nmドライ酸化膜、1250℃の酸化後NOアニール10分間)で3e12 cm-2または6e18 cm-3の窒素ドナーがドーピングされることが分かった。窒素ドーピング密度は窒化処理MOSFETのしきい値電圧(Vth)とチャネル移動度(μFE)を決定する重要なパラメータである。窒素ドーピングには、(1)"カウンタードーピング効果"(Vthを負にシフト)、(2)負の界面固定電荷の発生(Vthを正にシフト)、(3)キャリア密度の増加(μFEを増加)、(4)クーロン散乱の増強(μFEを低下)の4つの効果がある。これらのバランスによってVthとμFEが決まり、3e12 cm-2の窒素ドーピングが、実際に観測されているVth(-2~-4V)とμFE(20~35 cm2/Vs)をどのように説明できるのかを示した。 C面水素処理: 水素終端に反応する"C面固有欠陥"の電流検出ESR(EDMR)分光観察に成功し、欠陥量と水素終端、そして電気特性(Vth、μFE)との関係を調べた。具体的には、(1)C面固有欠陥の量が減るほどVthが安定する、(2)C面固有欠陥が水素終端されるほどVthが安定する、(3)C面固有欠陥の存在はμFEには大きな影響を与えない(したがってC面MOSFETは60~100cm2/Vsの高いμFEを維持できる)ことである。さらに、新種の界面欠陥の検出にも成功した。 容量検出ESR(CDMR)分光法の開発とMOSFETへの応用: 新たに開発したCDMR法を上記の2つのMOSFETに適用し、Si面においてEDMR法では見つからなかった新たな界面欠陥を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの2年間で、4H-SiCの代表的な2つのMOS界面(Si面、C面)におけるしきい値電圧(Vth)、チャネル移動度(μFE)と界面欠陥との関係を分光学的に明らかにすることができた。特に本研究が用いている電流検出ESR分光(EDMR)法は、界面欠陥の起源につながる分光学的特徴(13C超微細分裂など)を捉えている。まだ界面欠陥の起源は完全には明らかになっていないが、これまでに検出された分光学的特徴をEDMR法でつぶさに解析すれば、界面欠陥の起源同定につながる。そうすれば、界面欠陥(起源同定ずみ)とVthの関係、同じくμFEとの関係を他の研究手法よりも断定的に結論することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの電流検出電子スピン共鳴分光(EDMR)観察や、新規の容量検出電子スピン共鳴分光(CDMR)観察によって、4H-SiC/SiO2界面欠陥を何種類も検出しているので、H27年度は、これらの界面欠陥の起源同定に照準を合わせて研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学術論文の投稿が次年度に繰り越しになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の学術論文投稿料として使用する予定。
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