研究課題/領域番号 |
25286057
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 圭 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (40335211)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | FM-AFM / フォースマッピング / 固液界面 |
研究概要 |
本研究課題では、これまでに開発してきた、液中で生体試料を分子分解能で観察できる周波数変調検出方式の原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用いた3 次元フォースマップ法により、生体試料表面における電気二重層力および水和力を分離して測定し、生体試料表面の電荷密度と水和構造のそれぞれの3次元分布を比較することで、これらの相関を明らかにしていくことを目的としている。また、脂質二重膜、自己組織化単分子膜、タンパク質やDNA などの生体試料表面の固液界面物性計測を実際に行い、官能基分布や塩基配列の識別を試みていく。 本年度は、3次元フォースマッピングの高速化のため、高共振周波数のスキャナを開発し、また、探針制御系のFPGAプログラムを最適化することで、1本のフォースカーブの取得時間を短縮した。また、FM-AFM装置を恒温槽(室温±0.1℃)内に設置し、さらに溶液の蒸発を抑制することで、ドリフトを1 nm/min程度以下に低減した。これにより、マイカ表面における水和構造や界面活性剤自己組織構造の3次元フォースマップを取得することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、おおむね順調に進展している。3次元フォースマッピング法では、探針は試料上の3 次元領域(x, y, z 各方向)を走査し、その際に探針にはたらく相互作用力、実際にはそれによって引き起こされるカンチレバーの周波数シフトを記録するが、本年度はこれを高速化するため、高共振周波数のスキャナを新たに開発した。また、探針制御系のFPGAプログラムを最適化し、1本のフォースカーブの取得時間を短縮することができた。また、FM-AFM装置を恒温槽(室温±0.1℃)内に設置し、さらに溶液の蒸発を抑制することで、ドリフトを1 nm/min程度以下に低減した。これらの開発により、マイカ表面における水和構造や界面活性剤自己組織構造の3次元フォースマップを取得することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
3次元フォースマップにおける等相互作用力面をリアルタイム再構成して表面形状を再構成する手法により、表面の高低差が数百nmにおよぶ生体試料においても安定に分子分解能像を取得する技術を開発する。また、モデル生体膜として、DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン)等のリン脂質分子の二重膜を作製する。DMPCは転移温度14℃、23℃においてそれぞれゲル相からリップル相、さらには液晶相へと相変化を示すため、興味深い。例えば、溶液の塩濃度や温度を精密に制御しながらDMPC膜表面で3次元フォースマップを取得することで、Debye長の変化、水和水の流動性の変化にともなう相互作用力の変化を捉えることを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度当初は、広帯域ロックインアンプを導入し、これをベースとしてデジタルPLLを構築する予定にしていた。しかしながら、本年度中に行った実験では、従来のアナログPLLを使っても十分に信頼性の高いデータを得ることができたため、広帯域ロックインアンプを用いたデジタルPLLの導入は次年度へ延期することにした。 次年度に、広帯域ロックインアンプを用いたデジタルPLLを導入する予定である。
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