研究課題/領域番号 |
25286062
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
加野 裕 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80322874)
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研究分担者 |
長谷川 秀樹 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (30301790)
森垣 憲一 神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10358179)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / 屈折率測定 / インフルエンザウイルス |
研究概要 |
まず,インフルエンザウイルスの検出を行う基本システムとして,液晶分子による旋光を利用した偏光操作デバイス,20マイクロメートル平方の領域を走査することが可能なステージ,送排液ポンプとシリコン製マイクロ流路などを用いて,局所領域の屈折率を測定する装置の試作を行った.このシステムでは,円形瞳照明系を用い,表面プラズモンによる光吸収がもたらす反射光空間周波数スペクトル変化を測定し,基板表面の有効屈折率を得る.装置試作後,標準試料(ラテックス微小球)を用いて試作装置の動作検証を行い,表面プラズモンの局在特性が理論計算とほぼ一致していることを確認した.さらに,無毒化したH1N1型のインフルエンザウイルスとモノクロナール抗体を用いて,基板表面の屈折率変化から,ウイルスの検出が可能であることを確認した. また,本研究では抗体の高密度配置を行う際に,脂質二分子膜の微細加工をくり返す計画であるが,その第一段階として,加工状態を観察するシステムの構築を行った.脂質二分子膜加工には,ジアセチレンが炭素鎖に導入されたモノマー脂質分子を用い,これを2光子光重合させる予定であるため,重合後のジアセチレンが発する自家蛍光を観察することとした.また,今後,光重合に2光子吸収法を用いる計画であることを勘案し,蛍光観察に2光子励起法を用いることとした.実際に,近赤外フェムト秒パルスレーザーを光源に用いて蛍光顕微鏡システムを構築し,動作検証の実験を行った.その結果,十分に高い蛍光信号強度が得られ,脂質二分子膜のパターン観察に有用であることを確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基板に固定したモノクロナール抗体に対して特異的に結合するインフルエンザウイルスを,基板表面の屈折率変化から検出する基本システムの構築を終え,脂質二分子膜を顕微鏡下でパターニングするための機構の導入と,脂質二分子膜のパターン観察を行う機構の導入を行った.脂質二分子膜加工を行う際の照射光強度や照射時間などを決定するには至らなかったが,システム開発は概ね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,抗体の高密度配置の実現に向けて,脂質二分子膜のレーザープロセッシングに関する実験を推進する.ジアセチレン基を炭素鎖に導入した脂質分子に対して,近赤外フェムト秒パルスレーザーを照射して,ポリマー脂質二分子膜の微細パターンを生成するときの加工精度などを実験的に検証した後,基板表面の溶液を交換できる状態にして,抗体固定の過程までを顕微鏡下で連続的に進める実験を行う. また,初年度に試作した装置に対して,測定の高速化を目的とした改良を行い,実験の効率を向上させる.具体的には,ラジアル偏光させた0次ベッセル光を回折限界まで絞り込んで,励起光を基板に照射し,測定領域に生じる屈折率変化がもたらす反射光強度の変化を測定する.この光学系では検出器にフォトダイオードを用いることができるために大幅な時間短縮が可能となる.また,ビーム走査を組み合わせると観察領域の拡大も実現できる.試作装置では最高 10 フレーム/秒程度の動作速度を実現する.0次ベッセル光の生成と集光スポットには空間位相変調器を用いる予定であるが,空間周波数スペクトルの広がりのために屈折率変化の検出感度が不足する場合は,アキシコン素子を用いて0次ベッセル光を生成する.試作装置を用いて標準ラテックス球のイメージングを行い,空間分解能を確認する.その他,溶液交換しながら屈折率標準液や超純水の屈折率測定を行い,屈折率測定感度を確認する.
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次年度の研究費の使用計画 |
スパッタリング成膜装置を入札によって導入したが,それによって使用計画と差異が生じた. 実験を行うのに必要な消耗品(超高屈折率ガラス基板,スパッタリングターゲットなど)の購入に充当する.
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