研究課題/領域番号 |
25286063
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中嶋 誠 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 准教授 (40361662)
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研究分担者 |
音 賢一 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30263198)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 非線形光学効果 / 磁性 / メタマテリアル / 半導体物性 |
研究実績の概要 |
本研究では、レーザー励起テラヘルツ波により、高感度なスピン分光を実践し、スピンダイナミクスを明らかにすることである。また磁気光学素子をはじめとするテラヘルツ帯デバイスへの応用や、高強度なテラヘルツ波パルスによる、非線形な応答の現象の探索をすすめることである。 磁性体表面に金属の分割型リング共振器(メタマテリアル)を作成し、電場誘起の磁場を発生させることで効率的にスピン歳差運動を励起・生成させることが可能であることを示した。微細構造を用いない励起に比べて10倍程度の大きなスピン歳差運動の生成に成功した。またスピン歳差運動のダイナミクスに着目すると、緩和過程において、微細構造における損失がスピン緩和を速めているという結果が得られている。この成果はPhysical Review B誌に掲載された。 金属平面メッシュをメタマテリアルと捉え、分光測定をおこなった。メッシュにいれるカットの量によって、そのテラヘルツ帯の応答は金属的から絶縁体的に変化することが分かった。また一つのメッシュに2つカットをいれることにより、非等方的な分布を作成し、それによって、透過偏向が回転することを見つけた。 アルミニウムや銅の微細金属球集団において、テラヘルツ波パルスを照射することにより、金属間が瞬時に導通する現象、いわゆるブランリー効果をテラヘルツ波パルスで行うことに成功した。これはテラヘルツ波パルスを照射することによって、DC伝導特性が大きく変化する現象であり、金属粒子の表面に存在する酸化膜層がブレイクダウンし導通することで生じたと解釈している。このブランリー効果もしくはコヒーラー現象は、電波領域での電磁波において観測されているが、まだその現象の起源ははっきりしない部分が多く、テラヘルツ帯での報告は今回が初めてである。コヒーラー現象のイメージングにも成功し、その導通方向がテラヘルツ波の偏光方向に依存することも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テラヘルツ波パルス実験にメタマテリアルを利用し、スピンダイナミクスの測定を行うなど、計画どおりに進んでいる。また微小金属球集団において、テラヘルツパルス励起の不可逆絶縁体金属転移の観測など成果が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにおこなってきた磁性体におけるスピン歳差運動の観測に、メタマテリアル等を組み合わせることで効率的にスピン歳差運動を観測する試みをさらに進めていきたいと考えている。またテラヘルツ帯のデバイス応用なども積極的に取り組んでいきたいと考えている。 高強度のテラヘルツ波パルスによって生じる非線形現象に着目し、そのダイナミクスなど未だ未解明な部分が多く、上記に示したコヒーラー現象の解明などに注力して研究を進めていきたいと考えている。 研究をより推進させるためにも、2015年4月より、PDの雇用を行っており、研究進展の加速を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究室の教授が急に亡くなるなど、本年度は研究室体制に大きな変化が生じた。それにより、一部予定していた予算の執行が遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度においては、本研究に従事してもらうためにPDを雇用するために、人件費を計上している。
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