研究課題
基盤研究(B)
申請者らが独自に開発したテラヘルツ(THz)波検出法としてのチェレンコフ位相整合電気光学サンプリング(Cherenkov-EOS)法をさらに発展させ,高度化する。本研究では (i)プラズモニクスを応用してその感度を飛躍的に増強し,また(ii)光導波路構造および波面傾斜法を用いて検出帯域を大幅に拡大し,さらに (iii) 高感度なTHz波リニアアメージング素子としての展開を図る。 H25年度は上記の目的を達成するため,以下の研究に取り組んだ。(i)テーパー付金属平行平板導波路を用いた感度増強: 薄膜LN結晶をSiプリズムプレートとともに金属V溝に結合した金属平行平板導波路内に配置した構造を作る。導波路幅(すなわちSiプレートとLN結晶の厚さ)を数10um程度にすることで,約2桁のEOS感度増強を目指す。LN結晶は0.3mmまで機械的に研磨することに成功した。しかし0.1mmに研摩すると「割れ」が生じ,0.1mm以下に薄膜化することは通常の研磨法で難しいことが分かった。そのため他の加工法もしくは薄膜化LN結晶の製作法を検討中である。(ii)検出帯域の拡大: Cherenkov位相生後EOサンプリングの検出帯域を拡大するために, LN結晶にスラブ型光導波路構造を用いる方法とサンプリング光波の波面傾斜を用いる手法を試みた。厚さ40umのLN結晶にスラブ型光導波路構造を用いて,検出帯域はバルクの場合よりも広帯域化することを確認した。さらに広帯域化をすすめるために,波面傾斜法は試みた。しかし,顕著な帯域変化を確認できなかった。波面傾斜の制御性が悪いことが考えられるので,さらに波面制御性を改善して,実験を継続する。(iii) Cherenkov位相整合EOサンプリングによるTHz波の周波数分解検出: 一方,一連の実験を通じて,Cherenkov位相整合EOサンプリングは,テラヘルツ波の周波数成分は角度分解されて検出されることを実証した。その周波数分解能,検出される周波数成分の空間分布など,その特性を詳細に調べた。
2: おおむね順調に進展している
結晶研磨とサンプリング光波の波面制御に苦労しているものの,計画どおり研究を実施することができた。また一方で,非共軸なCherenkov位相整合に基づくヘテロダインEOサンプリング法は,遅延時間走査を行わずにテラヘルツ波の周波数分解検出が可能であることを実証するなどの成果もあった。以上により全体としてはおおむね計画通りに進展しているといえる。
1.リニアイメージング素子の開発:平成25年度に発見した,ヘテロダイン電気光学サンプリング(EOS)法によるテラヘルツ波検出における周波数の空間分解特性を利用したリニアイメージング素子の開発研究を実施する。ヘテロダインEOSにおけるこのような空間的な周波数分解能検出特性を利用すれば,従来法で必要とされている時間遅延走査なしにスペクトル情報が得られる。平成25年度にその原理実証を行ったが,平成26年度はヘテロダインEOSで得られるTHz波の波形と位相不整合および空間分布との相関を理論的に明確にするするとともに,その周波数分解能などの特性を詳しく調べる。さらにリニアイメージング素子としての動作実証を行う。2.波面傾斜法による2次元イメージング: 回折格子を用いてサンプリング用のレーザーパルスの波面を傾斜させ,傾斜した波面の各位置でのテラヘルツ波の空間的な分布情報を得る手法(波面傾斜法)を試みる。1次元リニアアレイセンサーなどで,波面傾斜法によるEOS信号の空間分布強度を測定することでテラヘルツ波の空間分布を測定することができると考えられる。その原理実証実験を実施する。一方,以下の技術課題解決にも取り組む。(i) 結晶の薄膜化:機械的に研摩によらない方法で厚さ0.1mm以下に非線形光学結晶を薄膜化するため加工法もしくは薄膜化LN結晶の製作法を検討する。(ii) サンプリング光波の波面制御性の改善:Cherenkov位相整合EOサンプリングの検出帯域を拡大するため,および2次元イメージングのために,サンプリング光波の波面傾斜を行うが,波面制御性を高めるために回折格子による分散と波面傾斜後のサンプリング光波の空間分布特性を詳細に評価する。
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Optics Express
巻: 21 ページ: 9277&-8211;9288
10.1364/OE.21.009277