研究課題
本研究は申請者らが独自に開発したテラヘルツ(THz)波検出法としてのCherenkov位相整合電気光学(EO)サンプリング法をさらに発展させ,高度化することを目的としている。本年度の具体的な研究実績は以下のとおりである。(i)テーパー付金属平行平板導波路におけるTHz波の伝搬特性と電場増強効果:昨年度,テーパー付金属平行平板導波路を用いることで,THz波をサブ波長以下の導波路幅に閉じ込め,EOサンプリングの感度を大幅に改善できることを実証した(この成果はApplied Physics Express Vol. 7, 112401(2014)に発表)。金属導波路を用いてさらに感度増強を図るため, THz時間領域分光法を用いて実験的にTHz波の伝搬特性を詳細に調べるとともに,解析モデルやFDTD計算等を用いて理論的な研究を実施した。(ii) 光位置センサーによる検出帯域の拡大:昨年度,スラブ型光導波路構造を持つLN結晶を用いて,検出帯域を改善することに成功した。さらに検出帯域を改善するため,光検出器に光位置センサー(Position Sensitive Detector, PSD)を用いて,広帯域化することを試み,検出帯域を改善することに成功した。(iii) LN結晶以外の電気光学結晶によるEOサンプリング:GaAsは比較的大きな電気光学係数を持ち,光領域とTHz領域の屈折率差が小さく,Siプリズムなどの空間結合素子が不要である。このため,GaAs結晶をテーパー付金属平行平板導波路内に挿入し,プローブ光波長1.55umを用いてCherenkov位相整合EOサンプリングを試み,GaAs結晶によるCherenkov位相整合EOサンプリングを実証した。また,非常に大きな電気光学係数を持つBaTiO3結晶をCherenkov位相整合EOサンプリングに用い,有望な結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
初年度の平成25年度にテーパー付金属平行平板導波路を用いてEOサンプリングの検出感度を約20倍増強することに成功している。また一方で,非共軸なCherenkov位相整合に基づくヘテロダインEOサンプリング法は,遅延時間走査を行わずにテラヘルツ波の周波数分解検出が可能であることを見出し,THz分光イメージング用のリニアセンサーの原理実証を行っている。平成26年度は,(i) テーパー付金属平行平板導波路におけるTHz波の伝搬特性と電場増強効果について実験的,理論的研究を実施し,(ii)PSDを光検出器として用いて広帯域化に成功した。また (iii) LN結晶以外の電気光学結晶として,GaAsとBaTiO3を用いたEOサンプリングを試み,有望な結果を得た。これらの実績から研究はおおむね順調に進展していると言える。
今後, Cherenkov位相整合EOサンプリングのさらなる高感度化のために,空間結合素子としてのテーパー付金属平行平板導波路の形状最適化を行うとともに,EO結晶の薄膜化を行う。またBaTiO3結晶中のTHz波吸収を低減するために,光導波路構造を結晶中に導入することなどを試みる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 3件)
Applied Physics Express
巻: 7 ページ: 112401(3pages)
10.7567/APEX.7.112401
Plasmonics
巻: 10 ページ: 165-182
10.1007/s11468-014-9791-3
応用物理
巻: 83 ページ: 917-922