研究課題/領域番号 |
25286075
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
縄田 耕二 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 基礎科学特別研究員 (90586405)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光学素子・装置・材料 / 非線形光学 / レーザー |
研究実績の概要 |
1~20THzの周波数帯は極性を示す半導体結晶や誘電体のフォノン振動数領域に対応しており、誘電関数の実部と虚部を決定することは物質の特性や構造を知る上で極めて重要である。現在、テラヘルツ分光器は、広帯域に測定できるが振幅のみしか検出できないフーリエ変換赤外分光法(FTIR)と周波数帯域は限定的だが位相情報も容易に得られるTHz-TDSの二つが主流となっている。 本研究課題は、有機非線形結晶を用いた広帯域周波数可変テラヘルツ波光源を開発し、従来測定できなかった高周波帯域において広帯域にわたるテラヘルツ分光を実現することを目的としている。 昨年度までに近赤外波長可変レーザーとファイバー光増幅器を利用し、連続波で1Wを超える出力を得ており、本年度はテラヘルツ波発生光源の構築に取り組んだ。2台の近赤外波長可変レーザーの出力は3dBファイバーカップラーを利用して合波し、ビート変調周波数がテラヘルツ帯になるように設計した。合波された近赤外光はファイバー光増幅器を利用して高出力化し、2波長合計で1Wを超える出力を得ることができた。得られた出力光は有機非線形光学結晶へ入射し、非線形光学効果によりテラヘルツ波発生が可能である。テラヘルツ波出力は極低温Siボロメーター検出器とロックインアンプを利用して計測可能である。また、並行して本研究で利用する有機非線形結晶DASTの合成に取り組み、最終的に単結晶を得ることができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テラヘルツ波発生用に2波長光源は利用可能な状態にある。また、本研究で利用する有機非線形結晶DASTの材料合成に成功し、テラヘルツ波発生に利用可能な単結晶も得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は得られた有機非線形光学結晶を用いて連続波励起光源からのテラヘルツ波発生を評価する。特に有機非線形光学結晶における光損傷は結晶内の熱蓄積が主要因であると判明している。そのため連続波励起光のパワーおよびビームスポットサイズで決まる波長変換効率とレーザー損傷閾値はトレードオフの関係にあり、最適設計を行う必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、有機非線形結晶DASTの材料合成に研究時間を多く利用したため、テラヘルツ波発生を次年度へと持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費使用予定として、近赤外2波長光源からのテラヘルツ波発生を行う際に、レーザー光源評価や非線形光学結晶の耐性など研究項目が多岐にわたっており、それを踏まえ多種の光学部品が必要になるため、それらに割り当てる。さらに、有機非線形光学結晶は消耗品であるため、新たな結晶作成に必要な各種原料や有機溶媒などの消耗品が必要となる。 また、春に米国で開催されるDSSで研究成果の一部を発表しつつ、科学的な議論をより深く行うために別途国際会議に参加することを想定して旅費を計上する。年に一報の海外学術論文誌への投稿も考慮に入れている。
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