研究課題/領域番号 |
25286079
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
豊田 浩孝 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70207653)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / マイクロ波 / 長尺プラズマ / 高密度プラズマ / 表面処理 |
研究実績の概要 |
長尺かつ高プラズマ密度をもつ大気圧プラズマは、さまざまな大面積対象物の高速処理に有効なプラズマ源として、多くの分野からその実現が求められている。本研究代表者は、従来にない高密度かつメートルサイズで長尺な大気圧プラズマ生成手法として、サーキュレーターを利用して定在波の存在しない導波管構造を実現し、長尺のスロット内部で直線的かつ均一なマイクロ波プラズマを生成するということに成功した。本研究は、これまでの基礎実験の結果から明らかとなっている“スロットに沿ってプラズマが移動する”という本プラズマの特徴的な挙動に着目し、詳細なプラズマ計測をもとにその機構を明らかにする。これをもとに、本プラズマ源の生成・制御に関する知見を得ることで、メートル級長尺プラズマ装置の設計指針を明らかにすることを目的としている。 本年度は、高速ビデオカメラを用いた計測により、さまざまなスロット幅やパルスマイクロ波のパルス時間を変化させながらプラズマの動きがどのように変化するかをさらに詳細に進めるとともに、移動するプラズマの発光強度の分布から電離レートを推測し、これと拡散シミュレーションを組み合わせたシミュレーションを行うことにより、プラズマの移動についての検討をおこなった。その結果、プラズマ移動の速度やそのパルス幅などのパラメータに対する依存性をよく説明できることが示され、本研究代表者の推測した通りプラズマの拡散に起因したプラズマ移動がその原因であることが明らかになった。さらに、これまでの研究で得られたプラズマが直線的に均一なプラズマでありつつも、実際には孤立したプラズマの移動によって時間平均的にプラズマ均一性が得られていた点をさらに改良し、時間空間的に均一なプラズマを生成することを試み、スロット幅や電力の調整により、時間的に変化することのない空間的に連続で均一な安定したプラズマを得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の当初の目的であった“スロットに沿ってプラズマが移動する”という本プラズマの特徴的な挙動の機構を明らかにすることについて、本年度の実験・計測および独自に構築したシミュレーションとの比較により、プラズマ移動機構が、1)プラズマ端におけるわずかなマイクロ波反射に起因した孤立プラズマ中のマイクロ波電界強度の偏り、2)電界分布の偏りによる孤立プラズマの中における電離レートの空間的偏り、3)これによるプラズマ密度分布の偏りとプラズマの拡散によるプラズマの移動、によるものであると結論付けることができた。以上のように、当初の研究の重要な目的であるプラズマ移動機構について理解することができた。また、さらにこの問題の解決だけでなく、孤立したプラズマの移動による均一化ではなく、真に空間的に均一で安定したプラズマの生成に取り組み、スロット幅の調整やマイクロ波電力、パルスデューティー比の最適化により、時間空間的に定常で均一なプラズマの生成に成功した。これは当初の研究目的を超える成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、分子ガスを導入した際のプラズマへの影響を調査するとともに、表面処理等への応用に向けての検討を進める予定である。そのために導波管構造の改良を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画であったICCDカメラ部品の購入について関係研究者の協力によりカメラ借用が可能となったため、当該助成金を充てることなく研究を遂行することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究においては、スロット構造や導波管構造がプラズマ生成・制御に向けての重要なカギとなる。そこで助成金は、スロットの製作の他、ガス導入が可能なさまざまなサイズの導波管構造の試作などの費用に充てる予定である。
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