長尺かつ高プラズマ密度をもつ大気圧プラズマは、さまざまな大面積対象物の高速処理に有効なプラズマ源として、多くの分野からその実現が求められている。本研究代表者は、従来にない高密度かつメートルサイズで長尺な大気圧プラズマ生成手法として、サーキュレーターを利用して定在波の存在しない導波管構造を実現し、長尺のスロット内部で直線的かつ均一なマイクロ波プラズマを生成するということに成功した。本研究は、これまでの基礎実験の結果から明らかとなっている“スロットに沿ってプラズマが移動する”という本プラズマの特徴的な挙動に着目し、詳細なプラズマ計測をもとにその機構を明らかにする。これをもとに、本プラズマ源の生成・制御に関する知見を得ることで、メートル級長尺プラズマ装置の設計指針を明らかにすることを目的としている。 本年度は、プラズマ装置のさらなる高性能化をめざし、分子ガスを用いたプラズマ生成を試みた。その結果、導波管構造を改良することにより希ガスを添加しない100%分子ガスを用いた条件においても安定なプラズマを生成することに成功した。またこれまでパルスマイクロ波を用いた放電をおこなっていたのに対して、CWマイクロ波によるプラズマ生成もおこない、安定なプラズマ生成を確認している。またこのようなプラズマにおいて、分子ガスプラズマ生成時におけるガス温度計測などをおこない、従来の希ガスプラズマより温度は高くなるものの、1500K程度のガス温度であり、プラズマが熱プラズマ化していないことも確認している。 一般に、非熱平衡大気圧プラズマはプラズマの熱化を避けるためにパルス放電をおこなう方法が多く用いられているが、本プラズマはそのようなことをおこなうことなく安定にプラズマを生成できることを示しており、実用的な観点だけでなく、プラズマの生成メカニズムの観点からも非常に興味深い結果となっている。
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