研究課題/領域番号 |
25286082
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 啓司 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00215584)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 微小液滴 / インクジェット / マイクロカプセル / 微細加工 |
研究実績の概要 |
本研究ではμm径のカプセル構造を持つ機能性粒子を高速生成し、かつそのマイクロ構造を安定化させる技術を構築することを目的とする。さらにマイクロカプセル構造を長期にわたって安定的に保持。保存できるプロセスを開発し、一連の空中造形プロセスの最終モデルを完成させる。最終的に生成される安定したマイクロ粒子はその構造の分布や歩留まり、経時変化や外的環境に対する安定性などを容易に観察、評価することが可能である。このため微小液滴空中造形プロセスの将来の工業化に向けての定量的な評価基準を与えることになる。本研究では「微小液滴空中造形プロセスによるマイクロカプセル生成」という象徴的かつ具体的な成果を結果として明示し、この技術の「ものづくり手法」としての優越性を学界ならびに産業界に示すことが最終的な目標である。 今年度は、複数の液滴の衝突により自然界では存在しない高表面密度の表面吸着膜を作製しその物性計測を試みた。二つの液滴が衝突融合する場合、形成後の液滴の表面積は衝突前に比べてその総量は減少する。界面活性剤分子を溶融する液体を用いて液滴衝突を行うと、衝突前にすでに飽和状態の吸着膜が液滴表面に形成されているために、衝突により過飽和の表面吸着状態が生じる。通常の界面活性剤溶液では、バルク中にミセルなどの分子集合体を形成してしまうため、高濃度領域においてもこのような過飽和状態の表面吸着膜は形成されないが、マイクロ液滴プロセスを用いることで人工的に分子の高密度状態を作り出すことができる。衝突後の液滴振動から、平衡状態よりさらに表面エネルギーが小さい状態が過渡的に形成されること、さらにこの状態が数0.1m秒のオーダーで平衡状態へと緩和していく様子が実験的に観測できた。このような過飽和吸着状態の観察は、より界面活性の高い両親倍性分子を設計する上で重要な知見お与える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究により、自然界には存在しない高密度の表面吸着膜の形成とその物性測定が可能になった。これにより当初計画段階での材料の選択肢が大幅に広がり、いわば過渡的ではあるが非常に界面活性の高い吸着状態を観察することができるという大きな成果を得た。この技術は今後の界面活性剤の分子設計上、重要なツールとなるものであり、本研究においてこれを高精度化する試みを加えることとした。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画に沿って進めるとともに、様々な分子の過飽和状態が作る構造のモニタリングを行うための新たな手法についても技術開発を行う。さらには本手法を3滴以上の液滴の衝突融合現象に応用する可能性を探る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究により相溶する異種液滴の融合により形成されるハイブリッド状態の観察、および高濃度の表面吸着膜を有する液滴の形成が可能になった。この自然界には存在しない表面状態を詳しく調べるため、より高い時間分解能による顕微観察手法の開発が必要となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
高速ストロボ観察のための光学部品並びにハイブリッド液滴構造作成のための試料・試薬を購入する。
|