本研究ではμm径のカプセル構造を持つ機能性粒子を高速生成し、かつそのマイクロ構造を安定化させる技術を構築することを目的とする。さらにマイクロカプセル構造を長期にわたって安定的に保持。保存できるプロセスを開発し、一連の空中造形プロセスの最終モデルを完成させる。最終的に生成される安定したマイクロ粒子はその構造の分布や歩留まり、経時変化や外的環境に対する安定性などを容易に観察、評価することが可能である。このため微小液滴空中造形プロセスの将来の工業化に向けての定量的な評価基準を与えることになる。本研究では「微小液滴空中造形プロセスによるマイクロカプセル生成」という象徴的かつ具体的な成果を結果として明示し、この技術の「ものづくり手法」としての優越性を学界ならびに産業界に示すことが最終的な目標である。 今年度はより長いプロセス時間の確保を目指して、液滴の搬送距離を拡張しかつその位置再現精度を向上させる要素技術の開発を行った。これまでの研究により液滴が飛翔する空間の雰囲気圧力を低下させると、流れのレイノルズ数が減少する効果により飛跡が安定化するという現象を見出している。この効果を定量的に評価するために雰囲気圧力と位置再現性の関係を詳細に分析した。この結果、飛翔の安定化があるレイノルズ数近傍において相転移的に生じることが明らかとなった。さらに安定化の要因として雰囲気流れの安定化に要する時間の短縮の効果を見出した。動粘性係数は運動量の輸送係数であり、低圧においては気体の動粘性係数は増加する。これにより液滴射出開始から周囲の雰囲気流れが定常となるまでの時間は、運動量の輸送係数が増加することに伴って短縮される。実際に1/100気圧程度の減圧に伴って気流の安定化に要する時間は10分のオーダーから数10秒へと飛躍的に短縮され、工学プロセスとしての迅速性を確保することが可能になった。
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