研究課題/領域番号 |
25286087
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
早川 恭史 日本大学, 理工学部, 教授 (40307799)
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研究分担者 |
境 武志 日本大学, 理工学部, 助手 (20409147)
金田 隆 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (40185947)
高橋 由美子 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (70339258)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 量子ビーム / 単色X線 / PXR / CT / 元素分析 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、PXR線源を用いた吸収端を跨いだ2色CT測定の実証実験を進めた。まずは前年度と同様にPXRの中心エネルギーを調整し、吸収端前後の2条件での測定結果を比較する方法で実施した。具体的には、前年度の実験よりもSr濃度の低い試料を用意し、K殻吸収端をはさんだ15.6keVと16.6keVのPXRビームを用いたCT撮像を行い、その差分よりSr元素の3次元分布を取得することができた。この実験結果より、少なくとも重量比0.6%以上のSr濃度であれば、明瞭に元素の検出が可能であることが実証された。 本課題の主たる目標である、シリコン完全結晶の分光結晶を用いて吸収端を跨いだ2色CT同時測定実験に着手するため、既存の分光結晶のサイズでも反射ビームの照射野面積が大きくとれるようにするため、PXR線源の放射源であるシリコン結晶の結晶面を、Si(111)からSi(220)に交換した。これにより20keV以上のPXRビームが使用可能となったため、昨年度導入した大面積フラットパネル検出器(FPD)を用いて、5cm以上の大きさの生体組織等の軽元素試料のCT撮像を実施し、断層像を得ることができた。 2色同時CT実験については、Srを注目元素としてPXRビームの中心エネルギーをそのK殻吸収端16.1keVに合わせて実施した。この実験において、吸収端より低いエネルギーの領域が分光結晶に反射されることにより2色クロスビームが形成されるが、その反射率は70%以上で照射野の一様性にも問題は無く、十分イメージングに使用できるものであった。暫定的な実験セットアップであったが、予備的な測定に成功し、その結果を処理することによりチタン酸ストロンチウムで染められた部分のみ、3次元像として抽出することに成功した。 また、平行して今年度に導入した新しい低ノイズタイプのFPDを試験し、その特性を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度やり残した大面積FPDによる大型試料のCT撮像試み、生体試料など5cm以上のサイズの3次元断層像の取得に成功した。また、当初の予定通り、完全結晶を反射鏡として用いて吸収端を跨いだ2色クロスビームを形成してCT測定を実施し、それによる元素マッピングに成功した。ソフトウェアの開発は不十分で測定の自動かは進んでいないものの、学術的には本質的な部分ではない。従って、本研究の進捗はおおむね順調で、計画通りかそれ以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度の成果をふまえ、2色ビームCT実験を着実に実施し、様々な試料や元素についての3次元元素マッピングの取得を試みていく。予備的な実権に成功したものの、実験セットアップはまだ一時的なものであるため、効率良く実験データを蓄積するためにセットアップを整理して実験しやすいように再配置等行う。並行して測定の自動化も進め、そのためのソフトウェア開発も予定している。 得られた豊富な実験データに基づき、本研究の測定手法の潜在的な能力や、応用の可能性について議論を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
小額の消耗品の購入に際して千円以下の残金が生じた。同様の消耗品は次年度も購入の必要があるので、効率的に使用するために次年度に使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
小額の消耗品においても必要性の高い物品の購入を優先し、効率的に調達を進めるために次年度使用額を有効に使う。
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