研究課題/領域番号 |
25286095
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
湯本 博勝 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 光源・光学系部門, 研究員 (20423197)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | X線光学素子 / X線ミラー / 超精密加工 / 形状計測 / 放射光 / X線自由電子レーザー |
研究実績の概要 |
部分回転楕円面ミラー型光学素子による硬X線ナノ集光の実現を本研究の目的とする.開発した部分回転楕円面集光ミラーを利用して,硬X線自由電子レーザーの高強度集光ビームの形成を行う.このため,平成26年度は非常に急峻な曲率半径の部分回転楕円面形状を持つ実際のX線ミラー基板に対して,開発したX線ミラー作製基盤技術「高精度表面加工法」と「高精度表面形状計測法」を適用しX線ミラーを作製した. 研削加工により作製した表面粗さ4.3nm(RMS)の基板に対して,回転球型加工装置により表面粗さ除去加工を実施した結果,0.1nm(RMS)の表面を達成し,X線ミラーに対応可能であることを確認した.ノズル吐出型加工装置による形状修正加工の高空間分解能化を実施し,単位加工痕サイズに関して従来の0.2mm(半値幅)から0.1mm(半値幅)に向上すると共に,ノズル形状等の改良により高空間分解能かつ高速,安定した数値制御形状修正加工が可能となった.一方で,高精度表面形状計測法に関して,X線ミラーの表面粗さと形状誤差の低減に伴い,X線ミラーに要求される測定精度の1nm(RMS)に対して,従来の計測再現性0.8nm(RMS)から0.5nm(RMS)まで向上した.数値制御加工前後の形状計測結果を比較することで,目的とする分布の形状修正加工がナノ精度で実施できることを確認するなど,これらの特殊加工法と計測法がX線ミラー作製に有効であることを実証した. 開発したミラー姿勢調整装置・集光プロファイル評価装置と,作製した部分回転楕円面基板に白金コーティングしたミラーを用いて集光実験を実施した.結果,平成27年3月までに7keVのX線において集光サイズ:460nm×1200nm(半値幅)を達成した.本サイズはミラー加工広さと形状誤差に起因するものであり,今後,加工にフィードバックすることでナノ集光を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
部分回転楕円面ミラー光学素子のために開発した基盤技術「高精度表面加工法」と「高精度表面形状計測法」に関して,平成26年度は当初の計画通りこれらの技術を実際のX線ミラー基板に対して適用し,ミラー作製を実施した.平成26年度は,さらにノズル吐出型加工装置の高空間分解能化と加工レート向上を実施した.結果,ナノ集光X線ミラーに要求される形状精度1nm(RMS),表面粗さ0.3nm(RMS)を満足する次の作製精度:形状計測再現性0.5nm(RMS),加工精度に関して水平空間分解能0.1mm,高さ分解能1nm以下,表面粗さ0.1nm(RMS)を実現した.さらに,SPring-8において集光実験を実施し,基礎的な集光特性評価に至った.以上の様に本研究はおおむね順調に進展している. 研究費の繰越金額は本年度研究費の全体に対して1%であり,予算執行計画通り研究が進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発・高度化した高精度加工法と高精度表面形状計測法から成るX線ミラー作製プロセスを利用し,部分回転楕円面ミラーを完成し,硬X線によるナノ集光を実現する. 作製目標の部分回転楕円面ミラーは,数mmの非常に小さな曲率半径を持つなど,従来の高周波加工装置では水平空間分解能が不足していた.この問題に対応するため,平成26年度は数値制御加工装置の高空間分解能化を行った.平成27年度は,本装置を利用しミラー表面に残る形状誤差の数値制御形状修正加工を継続して実施する.高精度加工法と高精度表面形状計測法から成るナノ集光X線ミラー作製プロセスを実際のX線ミラーの加工に適用した結果,表面粗さを良好に保ちつつ,安定して形状修正加工が実施できることを昨年度確認済みである.加工と形状計測を何度か繰り返すことで,ナノ集光に必要となる表面形状精度1nm(RMS)まで,基板の形状誤差の修正加工を実施する.その後,7keVのX線の全反射に対応するため,X線ミラー表面に白金コーティングしX線ミラーを完成させる. SPring-8のコヒーレントX線を利用し,作製した部分回転楕円面ミラーの集光強度分布・集光ビームサイズ,反射率等の集光特性評価を実施する.7keVのX線エネルギーにおいて理想的な集光径40nm×60nmを実現することで,本研究で開発した高精度加工法と高精度表面形状計測法から成るX線ミラー作製プロセスにより,ナノ集光用部分回転楕円面ミラーが開発可能であることを示す.所定の集光特性が得られない場合は,実測した集光プロファイルの逆計算に基づきミラー表面に存在する形状誤差を回復計算し,加工や形状計測にフィードバックする.さらに,開発した本ミラーと硬X線自由電子レーザーを組み合わせ,高強度集光ビームの形成を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたより物品を安く契約できたため.
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次年度使用額の使用計画 |
X線ミラー作製や評価に伴うジグ類作製や消耗品購入,学会・論文発表のために予算を執行する.
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