研究実績の概要 |
部分回転楕円面ミラー型光学素子による硬X線ナノ集光の実現を本研究の目的とする.100nm集光のために,サジタル方向に曲率半径3mm台,傾斜角分布±70mradをもつ部分回転楕円面ミラーを設計した.平成27年度は,本研究で開発したX線ミラー作製基盤技術「高精度表面加工法」と「高精度表面形状計測法」を適用しミラーを作製した.数値制御加工装置において,ノズル流路と形状の改良により80um(半値幅)の単位加工痕を達成し,高空間分解能な形状修正加工を実現した.本ミラー作製システムを利用して,合成石英製基板上に,表面形状について計測再現性と同等の1nm(RMS)の形状精度,表面粗さは0.3nmRMSという超高精度部分回転楕円面ミラーを完成した.ミラーは表面加工後に白金をコーティングし,硬X線領域で全反射可能とした. 大型放射光施設(SPring-8, BL29XUL)において集光性能を評価した結果,7keVのX線において,85nm×125nm(半値幅)の2次元集光ビームを部分回転楕円面ミラーにより世界で初めて達成した.本ミラーを用いて走査型X線顕微鏡を構築し,100nmを十分下回るLine&Spaceテスト構造を観察することで2次元集光が同一焦点面内で非点収差無く実現できていることを確認した. さらに,開発した部分回転楕円面集光ミラーをX線自由電子レーザー施設で利用することで,10の20乗(W/cm2)の高フォトン密度集光ビームが期待できることが計算から示された. 本研究で作製可能となった部分回転楕円面ミラーにより,X線自由電子レーザーや放射光ユーザーに高安定・高強度ナノビームが提供できるばかりでなく,本研究で確立した精密生産技術は,天体望遠鏡や短波長高出力光源等の他分野の様々な高精度2次元非球面形状を要する光学素子の開発に応用が可能である.
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