研究課題/領域番号 |
25286097
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
櫻井 鉄也 筑波大学, システム情報系, 教授 (60187086)
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研究分担者 |
多田野 寛人 筑波大学, システム情報系, 助教 (50507845)
今倉 暁 筑波大学, システム情報系, 助教 (60610045)
池上 努 独立行政法人産業技術総合研究所, 情報技術研究部門, 研究員 (80245612)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルゴリズム / 高性能計算 / 大規模計算 / 非線形固有値問題 / 基盤ソフトウェア |
研究実績の概要 |
本研究課題では、非線形固有値解法を計算科学分野における各種のアプリケーションで活用することを目指し、大規模問題に適用可能な高性能な先端計算アルゴリズムの開発とその理論研究、適用性・利用性向上のための技術開発を行う。また、確率的固有値分布推定法を利用したパラメータ最適化技術を開発する。これらの技術をもとにして非線形固有値計算ソフトウェアを実装し、実アプリケーションへの適用と性能評価を行う。 非線形固有値問題の解法を対象として、1) 非線形固有値解法の理論基盤構築と高性能化手法の研究、2) 実用化を目指した利用性向上のための技術開発、3) 非線形固有値計算ソフトウェアの実装、4) 実アプリケーションへの適用と性能評価、を実施する。 平成26年度は、前年度に引き続いて非線形固有値解法の理論基盤の整備を進め、周回積分型の固有値解法の分類とその関係を示すとともに、周回積分を用いたArnoldi型の解法についてその理論整備を進めた。また、Hankel型解法について、数値的な安定性の改善を行った。Hankel型解法はあらゆる問題の非線形性にかかわらず線形の小規模固有値問題に帰着できることからとくに並列計算においてその有効性が高く、精度の改善は解法の有効性を高める。 パラメータ自動設定法の開発による利用性の向上のために、確率的な手法による大域的な固有値分布推定法を行うことで、固有値分布範囲の絞り込みや解法の中で設定が必要となるブロック数やモーメント次数などの決定が可能となる。前年度に課題となった、一部の非対称問題の固有値分布推定法において発生する精度低下について解析を行い、不安定性が発生する場合の条件を示すことができた。また、理論解析をする上で便利なテスト行列を作成することができ、不安定性の改善に向けた数値実験の効率が上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非線形固有値問題に対する周回積分型解法の理論整備を進め、初年度にHankel型、Beyn型、Rayleigh-Ritz型についての関係を示すことができたが、さらに昨年度はArnoldi型の解法について提案し、その理論的な解析を行った。Arnoldi型の周回積分解法はこれまで提案されておらず、新規性が高い。この解法は逐次型のArnoldi法の特徴と同時型の周回積分型解法の特徴を備え、とくに直交化のウエイトが高い行列に対して有効性が高い。さらに、解法を効率的に適用するためのパラメータ推定法についても理論解析を進めた。前年度に課題となった固有値分布推定法において非対称行列で発生することがある精度低下について解析を行い、不安定性が発生する場合の条件を示すことができた。また、理論解析をする上で便利なテスト行列を作成することができ、不安定性の改善に向けた数値実験の効率が上がった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに各種の周回積分型解法に対して理論的な解析を進めたことで、非線形固有値問題解法の理論整備が進み、各種の解法の性質を示すことができた。前年度に示した、固有値分布推定法において非対称行列で発生することがある不安定性の理論解析結果をもとに、数値的安定化手法の開発を進める。さらに、これらの理論解析結果をもとに、高性能なソフトウェア実装を行う。また、物性分野や振動解析分野において現れる実問題を対象として、開発手法の有効性の評価を実施する。これらの成果をもとに、海外でも広く使われている固有値計算ライブラリであるSLEPcに組み込むことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ワークステーション(DELL T7600)の購入を取りやめ、既存のワークステーション(PowereEdge T420)で代用した為。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の発表のための海外出張費用として使用する。
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