研究課題/領域番号 |
25286098
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
越塚 誠一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80186668)
|
研究分担者 |
柴田 和也 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30462873)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 計算力学 / 生体力学 / 粒子法 / 肺がん / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
肺表面と胸郭内面の境界条件を改良し、医用画像に基づいた肺形状を作成し、呼吸性肺変形のシミュレーションをおこなった。計算結果は医用画像と比較することで、肺内部の各点の変位について定量的な比較を行った。肺以外の器官は、固定あるいは自由な境界条件としてシミュレーションに組み込んだ。 肺は自ら運動することはできず、胸郭と横隔膜の運動に追随して受動的に運動する。特に胸郭の運動のモデルの高度化を実施した。肋骨の運動は胸椎との接触部を軸として回転運動する。これまでは医用画像にもとづて強制運動させていたが、これを肋間筋の収縮による力を導入し、運動モデルを改良した。肋間筋は各肋骨の間にあり、協調して肋骨の運動を支配している。まずは、最低限の数の肋間筋をモデル化して、その収縮により肋骨が回転運動できるようにした。実際に本改良によっても胸郭の運動を再現でき、胸郭の運動を筋肉の収縮の結果として模擬できるようになった。本改良によって、肺の運動モデルを実際のメカニズムにさらに近づけることができた。 また、肺の呼吸運動以外の生体シミュレーションとして、三半規管内のリンパ液の流動現象や、口腔や咽頭の運動による嚥下にも適用した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺がんの放射線治療時における腫瘍の呼吸性移動をシミュレーションするために、肺形状を医用画像より得て、呼吸運動を横隔膜と胸郭の運動によって行う粒子法シミュレーション技術の開発を行っている。この当初の研究目的はほぼ達成され、シミュレーション結果は医用画像と定量的な比較を行うことができた。特に、横隔膜と胸郭の運動は、筋肉の運動の結果として得られるようにすることで、より原理的なメカニズムに基づいてシミュレーションができるようになった。
|
今後の研究の推進方策 |
粒子法はメッシュ生成が不要なシミュレーション手法であるため、複雑な3次元形状を容易に扱うことができるだけでなく、大変形に対してもメッシュが破綻することなく計算を進めることができる。また、形状の不整合に対しても耐性があり、ノイズが多く含まれることが多い医用画像に基づいたシミュレーションに適している。しかしながら、従来の有限要素法と比較して計算精度は悪く、今後の改良が必要である。 これまでの研究で、粒子法を肺の呼吸性移動に適用し、医用画像に基づいた生体の大変形をシミュレーションできることを示し、実際的な例題において粒子法の有用性を実証した。今後は、粒子法における高次精度の離散化スキームの開発など、計算精度の向上に関する研究に発展させていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年8月、すべり境界条件の計算モデルを開発する際に、一般的形状にも適用可能な計算モデルの開発が理論的に複雑になるゆえ、予想以上に困難であることが判明した。 この計算モデルの開発を確実に進めるため、計算モデルの再検討・改良に4ヶ月を要した。
|
次年度使用額の使用計画 |
旅費として国際会議参加(1回)国内学会(2回)、その他として学会参加費(3件)、論文掲載費ほか。
|