研究課題/領域番号 |
25286101
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
山本 誠 東京理科大学, 工学部, 教授 (20230584)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 計算力学 / マルチフィジックス / アイスクリスタル着氷 |
研究概要 |
着氷は,空気中に含まれる過冷却水滴が壁面に衝突して過冷却状態が解除され,壁面に氷層を形成する現象である.風力タービン,発電用ガスタービン,航空機,ジェットエンジン等においては,空力性能の大幅な低下や剥離した氷片による機械内部の物理的損傷など,致命的な影響を及ぼすことが知られている.特に,最近発見された“アイスクリスタル”と呼ばれる着氷現象は,主流静温が30℃程度の高温で生じ,その発生メカニズムが不明な状況にあり,ジェットエンジンの設計・運転上の大きな障害・技術課題となっている.本研究では,アイスクリスタル着氷に対して物理モデルを構築し,これを申請者が開発してきたマルチフィジックス着氷予測コードへ実装することにより,多段圧縮機において発生するアイスクリスタル着氷現象を数値的に解明することを研究目的とする. 平成25年度は,アイスクリスタル着氷モデルの構築・検証を目標として研究を進めた。研究代表者が開発した着氷コードでは,氷層以外の領域では壁面温度が流体温度と同じ,氷層領域では0℃と仮定する境界条件を用いていた.しかし,アイスクリスタル着氷現象は主流が30℃程度の高温領域において発生するため,このような既存の境界条件設定では着氷を再現することが不可能である.これは,過冷却水滴の衝突・熱伝達により,また,ひも状に発達した壁面上の液膜流により,壁面表面の温度が著しく変化することを示唆しており,これらの伝熱現象および壁面内部の熱伝導をも考慮して壁面表面の温度を正確に決定する必要がある.このため,既存の着氷コードに伝熱現象を評価する機能を追加し,壁面温度を予測できるようにしたアイスクリスタル着氷モデルの構築を実施した.開発したコードの検証は,平板と圧縮機翼に対して実施した.国際会議(APCOM2013)および国内会議(日本ガスタービン学会定期講演会)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アイスクリスタル着氷のモデル化および検証計算は予定通りほぼ完了し、多段圧縮機における液滴の熱的挙動の再現も順調に完了した。ただし、氷粒子が含まれている場合のアイスクリスタル着氷モデルの検証計算は未だ妥当な結果が得られていない。全体的な進捗度としては概ね90%程度である。
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今後の研究の推進方策 |
アイスクリスタル着氷のモデル化および検証はほぼ完了しているので、モデルの完成を目指すとともに、多段圧縮機に関する研究を進める。アイスクリスタル着氷モデルさえ完成すれば、既存の着氷コードに移植するだけなので、比較的容易に研究を進めることが可能であると考えている。また、コードの並列化に関しては、並列化効率をチェックしながら、効率的に進めるべく努力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費の支出が予定よりも少なかったため。 消耗品費として使用する予定
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