研究課題/領域番号 |
25287001
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
浅芝 秀人 静岡大学, 理学部, 教授 (70175165)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 導来圏 / 被覆 / クイバー / 傾複体 / 傾加群 / 自己入射多元環 |
研究実績の概要 |
以下,連携研究者を連研,研究協力者を研協で表す。浅芝は,群で重み付けられた関係式クイバーで定まる群次数圏と群のスマッシュ積を関係式クイバーで表す方法を与え,応用としてBrauerグラフ多元環の被覆を計算し多重矢,ループ,重複度,有向周回路を消去する具体的方法を与えた。また,研協の中島,吉脇等と共同で,非零サイクルを持たない多元環の一般多重拡大が同型になるための条件を精密化した。連研の伊山は,加藤希理子(阪府大),連研の宮地と共同で,アーベル圏AのN-複体導来圏D(N)が自然な三角圏構造を持つことを示し,BをAのN-2列の射全体のなす圏とすると,Aのある条件下で,D(N)がBの普通の導来圏と三角同値になることを示した。またSolbergと共同で,n-前団傾部分圏とn-極小Auslander-Gorenstein多元環との間に全単射を与えた。さらにDemonet, Jassoと共同で,多元環がτ-傾有限であるための同値条件を与えた。研協の足立と水野は,三角圏に対してthick部分圏のST-対(C, D)を定義し,Cの準傾対象をDのt-構造に移す単射を構成し,その全単射性と,Cの準傾離散性が同値であることを示した。連研の相原と水野は,Dynkin型前射影多元環が準傾離散であることを示し,傾複体とbraid群との間に全単射を構成し傾複体全体の分類を与えた。水野は,Dynkin型前射影多元環に対し,基本的な両側傾複体の具体的構成を与え,任意の両側傾複体がそれらの導来テンソルで与えられることを示した.研協の木村(雄)は,双対化多様体の反復圏を研究し,無限表現型の遺伝多元環Aに対してAの有限表示加群圏の有界導来圏は,Aの安定有限表示加群圏の反復圏と安定同値であることを示した。連研の功刀と研協の小境は,ブラウアー樹木多元環に対して片側傾複体を両側傾複体にする実用的な方法を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
群とのスマッシュ積の計算とそのBrauerグラフ多元環への応用(arXiv: 1709.09289),非零サイクルを持たない多元環の一般多重拡大が同型になるための条件の精密化(arXiv: 1803.02969),線型圏に対するゴレンシュタイン版被覆理論とその応用(J. Alg)を公表した。 準傾対象,傾対象の構成では,連携研究者の相原,伊山,功刀,越谷と研究協力者の足立,小境,水野が著しい成果を上げている。導来同値不変量に関連するホットシルト・コホモロジー群については研究協力者の板場が成果を上げている。また,研究協力者の木村(雄)によりHappelの定理はかなり拡張された。その他関連する環論の問題では,連携研究者の星野,河田,源,佐藤が順調に成果を上げている。
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今後の研究の推進方策 |
2圏論的被覆理論を拡張する。すなわち,小圏Iで次数付けされた線形圏(I-線形圏),それらの間の次数保存関手,次数保存関手の間の射を定義することによりI-線形圏の2-圏I-GrCatを正確に定義する。Iから線形圏への擬関手の全体I-CatからI-GrCatへの2-関手としてGrothendieck構成を定義しなおし,I-GrCatからI-Catへの2-関手としてスマッシュ積の概念を拡張し,それらの2-関手が互いに弱い意味の擬逆となるようにする。また,以上の構成を,関手の代わりに両側加群を用いて2-圏から双圏に一般化する。さらに,以上の一般化された被覆理論を応用して導来同値分類問題に取り組む。 国内外の研究者との情報・意見交換の場として,第51回環論および表現論シンポジウム(2017年9月19日から22日,岡山理科大学)の開催を援助する。本シンポジウムの報告集作成に経費を計上する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)海外からの招へいをあと1件予定していたが,相手方に十分な研究費があり,旅費の援助を断られたため,その分の予算が残った。今年度の計画はほぼ終了し,新しい予定を立てることは困難であり,来年度の国際会議の旅費あるいは国内シンポジウムの報告集の作成にあてる方が予算を生かすことができる。
(使用計画)来年度の国際会議の旅費あるいは環論および表現論シンポジウムの報告集の作成にあてる。
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