元来、多元環の表現論の中心課題は、環Aの構造を研究するために、その加群圏Mod Aを研究することであったが、その研究には導来圏D(Mod A)の研究が重要であることがわかってきた。本研究では,導来圏の研究を中心として,次の課題について多角的に研究を行い、多元環の表現論の一層の発展を目指した。1. 環の導来圏の構造に関する研究; 2. 傾対象の構成に関する研究(1の導来圏の同値性を調べるため); 3. 自己入射的多元環の導来同値分類に関する研究(2の具体的応用として); 4. その他関連する話題。 2013年度から2017年度までの5年間の研究により,これらについて多くの結果が得られた。例えば,課題1では,研究協力者の木村(雄)は双対化多様体の反復圏を研究し,無限表現型の遺伝多元環Aに対してAの有限表示加群圏の有界導来圏は,Aの安定有限表示加群圏の反復圏と安定同値であることを示した。課題2では,連携研究者の相原と水野は,Dynkin型前射影多元環が準傾離散であることを示し,傾複体とbraid群との間に全単射を構成し傾複体全体の分類を与えた。課題3では,連携研究者の越谷はその共同研究者と,第一コンウェー群に関して、ブルエ予想を完全に解いた。課題4では,浅芝は,群で重み付けられた関係式クイバーで定まる群次数圏と群のスマッシュ積を関係式クイバーで表す方法を与え,応用としてBrauerグラフ多元環の被覆を計算し多重矢,ループ,重複度,有向周回路を消去する具体的方法を与えた。 最後に補助事業期間を延長し,岡山理科大学で2018年9月19日から22日まで開催された,第51回環論および表現論シンポジウムの報告集(xi+161pp)を作成し関係者に配布した。このシンポジウムは本研究の発表の場であり,関連する多くの研究について講演された。
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