研究実績の概要 |
複素幾何において重要ではあるが非常な難問として知られる Donaldson-Tian-Yau 予想に関しては,最近の Tian や Chen-Donaldson-Sun による Kaehler-Einstein 計量の場合の肯定的解決にもかかわらず,一般の偏極をもつ代数多様体の場合や extremal Kaehler 計量にかかわる場合については,依然難度の高い未解決問題として残っている.研究代表者は,これら未解決の場合を念頭に Donaldson-Tian-Yau 予想の解決を目指して,北京清華大学の二木昭人氏のグループとも協力して関連する諸問題に取り組んだ.その一環として以下のことが実現した.
(1) 「extremal Kaehler 計量を有する偏極代数多様体が必ず漸近 Chow 相対安定性をもつ」ということを証明した我々の発表論文「Asymptotic polybalanced kernels on extremal Kaehler manifolds」が,Mok 教授還暦記念号の Asian Journal of Mathematics Vol. 22 (2018), 647-664 として出版された.
(2) 偏極代数多様体上の種々の安定性間の相互関係における課題として,昨年度証明に成功した「偏極代数多様体上では一様K-安定性が強K-安定性から導かれる」という定理について,北京清華大学の Yau Mathematical Sciences Center で講義の形で発表することが実現し,関連する専門家達のレビューを受けた.
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