研究課題/領域番号 |
25287011
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
後藤 竜司 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30252571)
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研究分担者 |
小木曽 啓示 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (40224133)
満渕 俊樹 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (80116102)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 一般化された複素構造 / 一般化されたケーラー構造 / K 安定性 / ケーラーーアインシュタイン計量 / モーメントマップ |
研究実績の概要 |
当該年度は次の研究を推進した. (1)一般化された複素構造の変形, モジュライ空間の構成と非可換代数幾何 (2) 「一般化されたケーラー-アインシュタイン計量」と「一般化された K-安定性」との同値性(Donaldson- Tian-Yau 予想の拡張) (1) については、概ね順調に研究が進展している. 研究結果を論文にまとめ、Arxiv 上発表し、submit した論文がaccept され、近々出版予定である. (2) については様々な試行錯誤を行っている段階である. 一般化されたリーマン計量とは通常のリーマン計量 g と実2次形式 b のペア (g, b) のことであり, 一般化され たリーマン計量 (g, b) に対して, 拡張された「 Levi-civita 接続」, 「曲率」そして「アインシュタイン条件」の構成を目指した. この際, 問題となるのは, 「曲率」がテンソルではなく, 微分作用素となってしまうことである. このような問題(アノマリーの問題といわれている)を解決する必要がある. 「アインシュタイン条件」は (g, b) に 関する偏微分方程式 (モンジューアンペール型方程式) で与えられることになると思われる. ケーラー幾何にお いて, スカラー曲率がモーメント写像となることが Donaldson-Tian-Yau 予想の出発点であった. 一般化された ケーラー幾何においても, モーメント写像を構成し, 上記, 一般化されたリーマン計量に関する「スカラー曲率」 とモーメント写像が一致することを示すことを目指した. 現状では、シンプレクティック幾何学の枠組みが適用可能であり、形式的にモーメントマップが構成されることまでは示すことが出来ている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究テーマ (1)一般化された複素構造の変形, モジュライ空間の構成と非可換代数幾何の研究が順調に進展している. コンパクト複素曲面 X 上の正則ポアソン構造を β とすると通常の複素構造から定める一般化された複素構造 J の変形として一般化された複素構造 J_β が得られる. これをポアソン変形という. J_β に関して, 次の定理を示した. 定理 1 ポアソン構造の零点集合 C = {β = 0} が非特異複素曲線ならば、J_β の変形は非障害的であり, 倉西空間は補集合 X-C の2次特異コホモロジー群 H2(X-C) の開集合で与えられる. この定理は通常の複素構造の変形と違いジェネリックな一般された複素曲面の変形が位相的なものとなるという著しい特徴を示しており注目に値する. 申請者はこの定理をもとにさらに, ポアソン構造の零点集合 C = {β = 0} に特異点がある場合 J_β の変形を詳細に調べ た. 特に, C = {β = 0} の特異点が m 個の node および cusp {p_i}からなっている場合, H3(X-C) = {0} ならば, 変形の障害は消えており, J_β の無限小変形空間は H2(X-C)と特異点 p_i のヤコビ環 I_i により決定される. すなわち, I_i は曲線 C の各特異点 p_i を局所的に スムーズにする変形に対応し, この局所スムージングは常に大域的スムージングへ拡張可能であり, H2(X-C) は特異点集合 {p_i}_i を保ちながら変形する変形の方向である. これらの結果は論文にまとめ発表した. さらに, これら変形の研究を下に, 一般化された複素曲面の大域的なモジュライ空間の構成に研究を進めた. モジュライ空間にはポアソン構造の零点集合の特異点の種類により, stratification が入り, 各 strata には, トーションが消えた平坦接続が入ることを示した (これを stratified flat structure という).
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今後の研究の推進方策 |
Donaldson-Tian-Yau 予想の解決は最近の複素幾何において最も重要な成果である. 一般化された複素幾何にお いても「一般化されたケーラーーアインシュタイン計量」が様々な形で提案され, また, 「K-安定性」に対応す る概念も示唆されているが, 未だに決定的な結果は見られない. この状況において, Donaldson-Tian-Yau 予想を 一般化された複素幾何の枠組みで確立する重要性は際立っている. ポアソン構造を持つケーラー多様体 (X, β)(ポアソン・ケーラー多様体)上, ポアソン変形 Jβ により与え られる非自明な一般化された複素構造に関して「小平の埋め込み定理」の拡張を示す. つまり, 十分次元の高 い射影空間の中に (X,Jβ) がポアソン部分多様体として埋め込まれることを示したい. この埋め込み定理によ り, ポアソン・ケーラー多様体の K-安定性が構成されると期待される. さらに, 上記, (g, b) に関する偏微分方 程式 (モンジューアンペール型方程式) を K-安定性の下で, 解く事により, 一般化されたケーラー幾何学におけ る Donaldson-Tian-Yau 予想を解決を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は金沢において国際研究集会 第22回複素幾何シンポジウムを開催する予定であり、そのための費用として 次年度使用額を計上した.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度10月31日から11月4日にかけて、金沢において国際研究集会 第22回複素幾何シンポジウムを開催し、海外から、この研究の第一人者を複数名招待し、講演してもらう計画であり、 彼らの渡航費用、宿泊費用などに使用する. また、国内から、この研究集会の講演者および参加者の宿泊費用を援助する予定である.
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