研究課題/領域番号 |
25287014
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
村上 順 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90157751)
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研究分担者 |
水澤 篤彦 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (50707726)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 量子群 / 射影表現 / 3次元多様体 / 結び目不変量 |
研究実績の概要 |
本研究では,量子不変量と双曲体積との関係を与える体積予想を核として,幾何構造の新しい量子化の手法の構築を目指している.これまでは,1の冪根に対応する量子群の射影被覆に対応する表現からできる logarithmic 不変量を通して結び目補空間や3次元多様体の幾何構造との関係について研究してきたが,本年は Chen-Yang による,冪根を2乗したものに対応する体積予想に注目し,様々な量子不変量について,体積予想を拡張した. 量子不変量としてはまずは結び目のジョーンズ多項式,その一般化であるカラードジョーンズ多項式,さらにはその3次元多様体への拡張である WRT 不変量がよく知られているが,3次元多様体については TV 不変量というものもあり,また,空間グラフに対しては KR 不変量というものも知られている.体積予想は結び目のカラードジョーンズ不変量に対する予想であるが,上にあげた他の量子不変量ではなりたたにことが知られていた.ところが,パラメータ q をその2乗に置き換えることにより,結び目だけでなく,3次元多様体の WRT 不変量でも体積予想が成り立つことが Chen-Yang により見出され,この考え方を用いることで空間グラフの KR 不変量や水多様体についても体積予想が成り立つことがいくつかの例で確認できた. この一般化された体積予想は,オリジナルの体積予想と同じく,一般的にはまだ証明できていないのであるが,四面体型グラフの KR 不変量,すなわち量子 6j 記号に対しては対応する双曲四面体の体積との対応を証明することができた.任意の3次元多様体は四面体分割により与えることができるので,四面体グラフでの証明は一般の場合での証明のための第一歩を与えたと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体積予想の証明といった大きな問題の解決には至っていないが,体積予想の新しいバリエーションを得ることで量子不変量と幾何構造の関係について新しい知見を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
結び目だけでなく,3次元多様体や空間グラフの量子不変量に関する体積予想の研究をさらに進めるとともに,以前から行っていた量子群の半単純でない表現に対応する logarithmic 不変量についても幾何的な性質との対応について,特に基本的な構成要素となる四面体型のグラフについて研究を進める. また,これまで,もっぱら sl(2) に対応する場合のみを扱ってきたが,他の階数の高いリー環に対応する量子群の場合についても幾何構造との関係を調べ,量子化の観点から幾何構造をどのように理解すべきかを明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
招聘予定の研究者が1人キャンセルになったため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に計画している研究会での招聘者を増員することで使用する
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