研究課題/領域番号 |
25287018
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高山 信毅 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30188099)
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研究分担者 |
小池 達也 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80324599)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多変数超幾何関数 / 多変数超幾何多項式 / A超幾何系 |
研究実績の概要 |
* 一般の A-超幾何多項式の Macaulay 型行列による高速計算: A-超幾何多項式の数値評価は原理的には可能であるが, 項の数が多くなってくると計算時間が大きくなる. この研究はこの困難に挑戦するものである. A-超幾何多項式はパラメータについての holonomic 差分方程式を満たすのでグレブナー基底を用いれば holonomic gradient method (HGM) で計算可能である. しかしながら, この手法(HGM)は二つの問題点をもつ. 1. グレブナー基底の計算は一般に高い計算量を必要とする. 2. 差分方程式の特異点があると計算を先に進めることができない. この研究ではこの二つの問題点について解決法を与えた. 1 については二つの手法 (a) (b) を与え、実装およびその評価を行った. (a) 日比, 西山, 高山による A-超幾何方程式の標準モノミアルの計算アルゴリズムを活用し, Macaulay 型行列をなるべく小さく構成し差分 Pfaffian を効率的に構成する. (b) Hilbert driven アルゴリズムによる S-pair 検証の省略. 2 については, $A$ が正規な場合に超幾何 b-関数を用いて特異点を回避する道を見つけるアルゴリズムおよびその実装を与えた. Risa/Asir contrib package ot_hgm_ahg.rr を公開中. * Fisher-Bingham 積分: この積分は統計由来の多変数超幾何関数である. この積分の満す holonomic 系の rank が 2n+2 であることを証明した. またこの事実を基礎として数値計算ライブラリを提供している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A-超幾何多項式の数値評価は項を列挙することにより原理的には可能であるが, 項の数が多くなってくると計算時間が大きくなるのが問題であり, この点をいかに乗り越えるかがひとつの大きな問題であった. A-超幾何多項式はパラメータについての holonomic 差分方程式を満たすのでグレブナー基底を用いれば holonomic gradient method で計算可能である(この場合は数列の漸化式). 漸化式を計算していく計算量は holonomic rank の多項式オーダーであるので多項式の項の列挙による直接計算に比べて一般に小さい. しかしながら, この手法はグレブナー基底計算の高い計算量により, 小さいサイズの問題でしか有効に機能しなかった. この研究では Macaulay 型行列を用いて漸化式をグレブナー基底を利用せず線形代数で導出することにより, 計算量を劇的に減らすことに成功した. これは大きな進展である. Fisher-Bingham 積分, Lauricella F_C の研究は数年前から続けているが, これらをまとめた論文が出版されたのは研究の一里塚である.
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今後の研究の推進方策 |
1. Macaulay 型行列または Hilbert driven algorithm による Pfaffian の導出方法は $A$-超幾何方程式一般に適用可能な方法である. この方法を超越的な $A$-超幾何関数の数値解析にも適用してみる. 特異点近傍で正しい数値評価をする問題は, 理論, アルゴリズム, 実装, 3分野にとって挑戦的である. 2. 上記の手法は一般的であるが, より特殊な超幾何系に対しては Pfaffian を twisted cohomology の手法等を用いて導出可能である. 勿論このような導出が可能であれば最も高速な計算方法を与えることができる. 超幾何系 E(k,n) や上記 F_C 等がこの手法の適用対象であると思われる. 3. Beukers の Gamma 関数による積分表示の数値計算への活用を検討する. 4. 合流型超幾何関数の数値評価は Fisher-Bingham 系を除き進展していない. とくに holonomic gradient method の初期値計算に漸近展開を使わざるをえない場合が極めて困難である. この困難を克服するアイディアが必要である.
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