研究実績の概要 |
* 不確定特異点をもつ A-超幾何関数の Laplace 積分表示: 発散級数解は一般に漸近展開としての意味をもつが, この研究では, ある条件をみたす A に対して modified A-超幾何方程式の一次元的な発散級数解が Borel summable であることを示し, Laplace 積分表示を与えた. この結果は積分表示による数値計算, および大域的解の挙動の解析のための基礎となる. * A-超幾何多項式でパラメータを無限大にしたときの値の近似公式: A-超幾何多項式はA-分布の正規化定数であり分布についての確率論的な議論で, 代表者高山はその分布の漸近挙動を関連する別の科研費のプロジェクトで分担者として研究した. この漸近公式を用いて, A-超幾何多項式自体でパラメータを無限大にしたときの値の近似公式を導出した. 厳密値と比較して良好な近似である領域がかなり広いことも数値的に調べた. * 分担者小池は Schafke と共に Schrodinger 型常微分方程式の Stokes グラフが saddle-free なら,Stokes グラフの face に対応する Stokes region で形式級数が summable であることを示し, さらに 各 Stokes region において, 対応する Laplace 積分表示が形式級数を漸近展開とする解析関数となっていることを示した. * 超幾何学校を開催し, 最新の研究状況を共有することにつとめた. 本年度は rapid decay homology cycle による A-超幾何関数の積分表示, マクドナルト対称多項式, ガウスの超幾何関数の特殊値がトピックであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統計についてのプロジェクトと相互に刺激を受けながら, 多変数超幾何関数の数値計算を大きく進めることができた. 特に巨大な多変数超幾何多項式の数値計算が可能になったこと, matrix 1F1 の数値計算が大きく進展したこと, は特筆すべき成果である.また, A-超幾何関数の発散級数解の Borel 総和法的意味付けや, Heun 型の方程式も含む常微分方程式の発散級数解の Borel 総和法的意味付けがなされたことは, これらの数値解析が通常の方法では困難な関数の大域的解析の道につながるものであり, 今後数値評価への応用も期待できる.
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