研究課題/領域番号 |
25287019
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
綿谷 安男 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (00175077)
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研究分担者 |
幸崎 秀樹 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (20186612)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 複素力学系 / C*-環 |
研究概要 |
この研究では有理関数Rの反復合成のなす複素力学系から、ヒルベルト双加群を経由して作用素環であるC*-環を構成する。作用素環と複素力学系という全く異なる分野の相互連関について研究する。私たちは分岐指数を使ってRのグラフ上の連続関数全体X=C(graph R)に、リーマン球面上の連続関数全体を係数環とする、ヒルベルト双加群の構造をいれた。この双加群から普遍的に生成されるC*-環を考え、有理関数Rの作る複素力学系がリーマン球面上で生成するC*-環という。この構成を完全不変集合であるジュリア集合JR上で同様に行ってできた Cuntz-Pimsner 環をOR(JR)とかき有理関数Rの作る複素力学系がジュリア集合JR上で生成するC*-環という。この構成を完全不変集合であるファトウ集合FR上で同様に行ってできた Cuntz-Pimsner 環をOR(FR)とかきRの作る複素力学系がファトウ集合FR上で生成するC*-環という。分岐点のような特異点の構造をRから生成されたC*-環上のK理論やゲージ作用の平衡状態(KMS状態)の言葉で表現することを考えた。今回えた結果は、複素力学系の分岐点の後方軌道構造の個数が、有理関数Rの作る複素力学系がリーマン球面上で生成するC*-環とその上のゲージ作用の平衡状態(KMS状態)から復元できるというものです。また、記号力学系と複素力学系の類似を研究した。マルコフシフトのような記号力学系を有限グラフで表現したときに、複素力学系の分岐点と有限グラフの吸い込み口が対応していることがわかった。有理関数Rの作る複素力学系がリーマン球面上で生成するC*-環のゲージ作用の平衡状態(KMS状態)の端点は分岐点でパラメーター化できるが、マルコフシフトからつくられるCuntz-Krieger環の場合はそれが吸い込み口で同様にパラメーター化できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作用素環と複素力学系という全く異なる分野の相互連関についてわかったことがあったから。複素力学系の分岐点の後方軌道の個数という、極めて力学系的な量がC*-環の情報から 回復できたことはよかった。複素力学系の分岐点と有限グラフの吸い込み口という、全く似ていないものの間に類似があることがわかったのは、不思議な発見であったから。
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今後の研究の推進方策 |
マルコフシフトのような記号力学系では次元群のような不変量が分類に重要な役割を果たしてきた。この次元群は実はマルコフシフトから作られるC*-環のコアのK0群と解釈できる。その類似として複素力学系から作られるC*-環のコアのK群を調べることが重要と思われる。コアはゲージ作用の固定環と思っていいのでこの類似は成立している。複素力学系の場合はコアのK0群だけでなく、K1群も出てくるの新しい現象も付き添いながら類似が成立するかを探求する研究計画をたてた。これが複素力学系の位相共役を除いた不変量であることはわかるので、その不変量であるアーベル群のK群を複素力学系の言葉で表せないかを調べたい。松本君がつくったsubshiftのつくるC*-環の手法も大いに手本になるはずである。具体的なR(z) = znの場合にはコアはよく知られたBunce-Deddence環になることまでわかっているので、これをモデルとして研究を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に国際数学者会議の衛星会議がおこなわれるので、その時の費用をして使いたいため。 韓国で開かれる国際数学者会議の衛星会議に出席する計画である。
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