昨年度に引き続き,空間1次元で5次の非線形項をもつ非線形シュレディンガー方程式に対する波動エネルギーの転換構造を研究した.空間1次元において,方程式の時空間変数の尺度に関するスケール変換の考察から,5次の非線形項は質量ノルムが不変であり,方程式の次元解析の見地からもエネルギー転換を調べることは重要である.これまでの研究では,Grebert-Thomannらによって,フーリエ波数が4モードに集約した条件の下で,波束の非線形相互作用によってどのようにエネルギー転換されるかということが,波束の大きさをパラメータとして考察されていた.この問題に対して,昨年度は全区間の問題を視野に入れて,パラメータとして周期の長さに取りなおし,方程式を近似する有限次元モデルの導出,およびその方程式から得られる特殊解の性質を研究することによって,解のエネルギー転換現象を解析した.本年度は,方程式の主要部分を表現する有限次元モデルを修正することによって問題を再考し,有限次元モデルと本来の解との誤差評価に関して,より高い精度の評価式を得た.方程式をフーリエ成分で書き下し,非線形相互作用の特異性に寄与する非線形共鳴成分をうまく抽出することにより,周期のパラメータに関して,エネルギー転換を示す指数のオーダーを改善することに成功した.次元解析を用いた解析では,空間1次元で微分型の非線形項をもつ非線形シュレディンガー方程式に対しても同様な解析が期待され,それは今後の課題とした.
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