研究課題/領域番号 |
25287037
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩室 史英 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80281088)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 光学赤外線天文学 / 望遠鏡 / 分割鏡 / 干渉計 |
研究実績の概要 |
平成26年度に行った研究開発は以下の通りである。 1) 位相カメラ開発:前年度までに、実際の望遠鏡光学系でも問題なく分割鏡間の段差を計測できることが確認できたため、主鏡上の24箇所を同時に計測するためのカメラシステムの実機を設計・製作し、制御・解析ソフトウェアを開発した。望遠鏡光学系のシミュレータ光学系を用いて24箇所の計測点のうちの1つを再現し、画像取得時にデータを24倍に複製することで24点全体を同時計測する状況の試験を行った。また、鏡の段差変更やチューナブルレーザーの波長スキャンを含む全システムを自動化し、段差を変化させるステージの駆動限界である 60μm の範囲内を17nmの精度で計測できることを確認した。さらに、主鏡上に配置するハーフミラーの固定部に関して、姿勢変化や温度変化に対する安定性の試験を行い、最適なマグネットベースの形状や使用する接着剤を決定した。 2) コーティング調査:望遠鏡の主鏡を長期間にわたり維持させるため、主鏡表面はアルミコーティングの上に SiO または SiO2 のオーバーコートをし、CO2 スノーや水洗いで反射率を維持することとなった。そのコーティングを行う複数の業者の候補からオーバーコートされた鏡のサンプルを入手し、反射率の耐環境試験を行い業者を選定した。 3) 分光器光学設計:主鏡研削のために開発された技術を用いることで、従来は製作が困難であった形状の鏡が製作できるため、鏡面形状として回転対称軸を持たないバイコニック鏡を6枚用いた反射光学系のみの分光器の設計を行った。これにより、非常に広い波長範囲を高効率で同時観測できる新しいタイプの分光器の製作が原理的に可能であることが確認できた。 4) 主鏡制御シミュレーション:本年度は前年度に引き続きソフトウェアの準備を進めたが、上記の研究開発を優先したため有意な結果は得られていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
位相測定カメラ開発に関しては、実機のカメラ部分が制御ソフトウェアを含めて8割程度は完成し、ハーフミラー部分も姿勢や環境温度の変化に対する最適な部品形状や接着材の選定が終了して24個を量産するだけの状況にある。これは当初の予定を十分に上回る速さで進んでいる。一方、主鏡制御のシミュレーションに関しては、望遠鏡全体の開発を視野に入れた際に他にも優先度の高い開発項目が出てきたため、そちらを優先させたため前年度に比べて大きな進展はなかった。その他、望遠鏡主鏡の向きを初期段階で調整する方法に関して検討を行い、実際に2ビーム平行光源を製作して調整精度を確認するなど、分割鏡の制御全体としての準備はおおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成27年度は、位相カメラシステムを調整時に必要な方向調整機能を有した3ビームレーザーを含む完全なものとして完成させ、望遠鏡焦点部の実際の設計とともに組み込み場所を決定する。また、試験副鏡と内周6枚の鏡のみの状態で使用するための変換光学系と固定治具も製作する。可能であれば、岡山に設置している仮ドーム内で、実際の分割主鏡上にハーフミラーを配置して、計測性能の確認を実機で行う。それと並行して平成26年度に進められなかった主鏡制御シミュレーションを再開し、新しく予定している72個の位置センサーを用いた状態での制御状態をシミュレーションする。また、望遠鏡に取り付ける観測装置や焦点部分の検討を進め、望遠鏡の性能を最大限に引き出すための準備を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
位相測定システムのため、ハーフミラー27枚(3枚の予備を含む)とミラーホルダー24個を製作する段階にあるが、26年度の残額では発注することができず、27年度の予算と併せて全て発注した方が良いと判断した。
|
次年度使用額の使用計画 |
27年度初めにハーフミラー27枚を発注することで、26年度分の残額は全て使用される。
|