研究課題/領域番号 |
25287038
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
栗田 光樹夫 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20419427)
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研究分担者 |
木野 勝 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40377932)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 計測 / 光学素子 / データスティッチング |
研究概要 |
本研究は研磨機などの工作機械の上で大型の光学面を精密に計測できる手法の確立を目指している。本計測方式は以下の点で優れる。1)基準を必要とせず、自己校正で精密な計測が可能。2)自由曲面の計測が可能である。3)機上計測であるため、加工プロセスを簡便で高速化できる。4)装置が軽量、コンパクト、廉価である。 本年度の研究成果として大きく2点ある。1つ目は新しいデータ接続方法の開発である。本方式は上記の様々な利点を有するものの、計測点数が多くなると積分誤差が増大するという問題がある。この問題は計測素子の性能を1ナノメートルまで校正できたとしても計測アルゴリズムの特性上無視できないほど誤差は増大してしまう。この問題を解決するために弾性体モデルを用いたデータスティッチング方法を考案した。これは従来の加算平均、スプライン補間、最小2乗フィットなどの要素を含みつつさらに発展的な手法で、離れた空間上のデータでも相互に関連することで誤差を平均化しつつも空間情報を失わないという特性を持つ。これにより、計測面を走査したデータ同士を接合(スティッチング)することで、計測精度を1ケタ程度向上する。この技術はすでに特許出願され複数の企業が利用している。 もう1点は計測素子の改良による成果である。本方式では従来の逐次3点法を採用しているが、この方式は3つの計測素子を並べて機械案内によって素子列を移動させるものであるが、本研究では計測素子を1つと機械的な接触点2つを用いて、単に被検面上を引きずる方式を開発した。この結果取得データにおいてはオングストロームレベルの再現性が得られ、簡易に極めて高いデータ取得方式を実現することに成功した。この方式であれば、機械案内を必要とせず、かつ自動的に被検面に沿って計測素子が運動するため、計測範囲も理論的には制限されないという点も特筆すべきことである。この技術も特許出願された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
データ取得方法、データ処理方法において新技術を発案で来た。このことは研究当初は想定しておらず、この技術による進展は大変大きい。また今回は述べなかったがもう一つ計測素子の校正方法も考案したため(特許準備中)、光学素子の曲率成分も含めた絶対計測が可能になりつつある。これは当初予定した目標を上回り、光学素子だけでなくひろくものづくり産業界にも貢献する可能性が出てきた。 具体的には本計測方式は3点法と呼ばれ、基準を必要としない計測法であるという特徴を持つ。これは計測システムがコンパクトで廉価であり、さらに機上計測も可能という特徴を有するが、形状情報を取得するうえでプローブの誤差が2回積分されるため、蓄積された誤差は無視できない大きさとなる。本研究では大きな面をこの方式で操作すし、得られた断面情報から面全体の形状を算出する。この際、各断面情報は相互に交点を持つが、先述の積分誤差のために相互に矛盾した結果を出力する。従来の方式ではこれらの矛盾が最小になるように最小二乗フィットを行うが、断面情報を剛体として扱うため、矛盾は完全には解消されない。本研究ではデータを弾性体とみなす方式を考案し、有限要素法を用いてこれらデータの交点の値を完全に一致させた。これにより、各データは滑らかに接合しただけでなく1ケタ程度の精度向も実現した。これは同じデータを得たとしてもこの処理方法により精度を向上できることを意味し、計測システムに対する負担軽減にもつながる。
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今後の研究の推進方策 |
極めて順調に進んでいる。また先述の通りこの技術の応用先が広がる可能性がある。今年度は当初の予定を若干前倒しして、平面、凹面、凸面の試験計測を行い。最終報告まで行う。さらに共同研究者らと共に、この計測技術の一般化を進める。また出願準備中のため詳細は触れられないが、本研究ではこれまでの光学計測でも実現できなかった曲率成分の計測も可能となる技術を考案した。これは自由曲面の「絶対計測」が実現できる可能性を有する。この曲率成分も補正できる新方式を実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
より単純な計測方式を考案したため、計測用のジグにかかるコストが低下した。 また基金制度が実現したため。 新たに考案した計測方式の成果報告当に使用したい。
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