代表者らはH27年度までの研究で、機械方式による真に自由曲面に対応した計測方法を確立した。この計測システムは、3つのセンサで曲面の局所的な曲率を計測し、曲率を逐次積分することで全体を計測する。この方式は、極めてシンプルに従来の光学方式の問題点を解決した。実験としてφ800mmの球面鏡を本方式で計測し、干渉計で計測した結果と比較したところ20nm程度の差で一致していることを確認した。 またこの開発では走査計測された多数のデータからより真値に近い形状を推定する方法を開発した(出願番号:PCT/JP2014/080802/)。通常、重複領域のデータは誤差により互いに矛盾する。従来では最小2乗フィットによりこの矛盾が最小になるようにデータの傾き等が補正される。この補正において各データは剛体として扱われる。しかしこの方法では計測中に緩やかに変動する誤差は改善しない。一方、代表者が考案したアルゴリズムはデータを弾性体とみなすことでこの誤差を効率的に抑制する。各データが弾性体であれば、相互に矛盾する重複領域において、強制的かつ滑らかに値を一致させることができる。変形した弾性体は内部の弾性エネルギーが最小の状態で定まり、この状態が最も真値に近い自然な状態と考えられる。この原理は古典的な算術平均の拡張である。実証実験として安定と不安定環境で計測したデータをこの手法で処理した。不安定環境の計測結果は、より真値に近いと考えられる安定環境のそれと大きく異なるが、データ処理後の結果はほぼ一致していることが分かる。
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