研究課題
基盤研究(B)
本研究では、宇宙天気現象の中でも特に巨大な太陽面爆発(フレア)と、ケプラー衛星により最近次々と発見されている太陽型星での「スーパーフレア」、つまり最大太陽フレアの10から1000倍ものエネルギーを解放する超巨大フレア、との比較研究を、観測と理論の両面から行うことを目的とする。またその研究成果に基づいて、スーパーフレアが太陽で発生する確率を明らかにすることを最終的な目的としている。平成25年度には、5月13日、14日、15日に起きた巨大太陽フレアなどの観測に成功した。これらについて、スペース観測と地上観測の観測データを用い、フレアのX線、極紫外線、可視光(白色光・Hα線)変動を詳しく調べた。特に、京都大学飛騨天文台SMART望遠鏡による、1秒間に約30フレームという高速撮像観測で白色光とHα線での太陽フレア画像が取得し、極めて短時間の変動を捉えた。また、スペース観測からは、地球大気による変動を受けない、安定した観測データを取得した。白色光フレアでの白色光増光のモデルを再現するための準備的研究を進めた。ケプラー衛星のデータについては、これまで30分の時間分解能データを用いており、これで検出できるスーパーフレアは規模の大きいものに限られていたが、1分の時間分解能データを用いることで、およそ30分の1の規模のスーパーフレアを検出することに成功した。加えて、すばる望遠鏡を用いて、平成25年6月に27個のスーパーフレア星の可視光高分散分光観測を行った。その中で、太陽とよく似た自転周期、温度、表面重力、金属量をもつ2個の星を発見した。ここまでの研究成果を、学術論文として出版し、国内外の学会および研究会で積極的に発表した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度には、太陽活動は極大期を迎え、5月13日、14日、15日の巨大太陽フレアなどの観測に成功した。太陽でスーパーフレアが発生する可能性について、ダイナモ理論に基づいた計算を行い、学術論文として発表するに至った。研究成果については、国内外での研究会・学会において招待講演を含む多数の講演や、天文学会誌『天文月報』で特集記事を執筆するなど、積極的に公表した。また、記者発表を行い、新聞2紙(日経新聞、赤旗新聞)に記事として掲載された。
引き続き、白色光フレアを引き起こすような巨大フレアの観測を行う。巨大フレアは、太陽活動が黒点極大期(H25年)を過ぎるころから観測されることが経験的に多いため、白色光フレアの研究がこの時期以降にタイムリーとなる。また、地上・スペースの両面から得られた多波長観測データから、噴出現象や加速粒子からの非熱的放射について調べ、フレアにより解放されるエネルギーの、電磁波放射(特に白色光増光)、噴出物、高エネルギー粒子などへの分配割合を明らかにする。これにより、巨大太陽フレアの総エネルギーと白色光増光の割合を明らかにし、太陽型星のスーパーフレアへ応用する。フレアの数値シミュレーションモデルを推進する。一つは、non-LTE放射輸送の効果も含めた1次元数値モデリングの発展である。またもう一つは、多次元(まずは2次元)化し、電磁流体効果も考慮することで、一層実際に近い状況を再現する。ケプラー衛星の長期間のデータを解析することで、スーパーフレアの発生頻度や恒星黒点の(太陽活動の11年周期のような)長期的変動も検出できる可能性がある。スーパーフレアの発生頻度と太陽の極小期・極大期におけるフレアの頻度との比較研究を行うことで、スーパーフレアを起こす太陽型星での活動性の変動が太陽と比べてどう違うのかを明らかにする。
年度途中でSMART望遠鏡の制御系が故障し、白色光フレアの観測に支障が出た。このため、太陽観測のための出張回数も減らすこととなったため、旅費などに余剰が出た。平成26年度速やかにSMART望遠鏡の修繕を行う。このためには、平成25年度分の太陽観測旅費の余剰金を充てる。これにより太陽フレア観測を早期に再開し、年次計画に遅延が出ないようにする。
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