研究課題
基盤研究(B)
本研究では,現在観測を続けている日本の「すざく」,欧米の「チャンドラ」,「ニュートン」を凌駕する広視野を持つ宇宙X線望遠鏡搭載を目指し,大面積・超高感度X線CCD を開発することを目的としている。本研究の最も本質的な課題は,可視光や紫外線の遮断対策である。軟X線帯域で高い感度を有する裏面照射型X線CCD (BI-CCD)を宇宙X線観測用に使用するには,全面を薄膜(OBF:Optical Blocking Filter)で覆い,可視光と紫外線を遮光している。このOBFは軟X 線にとって不感感層となるため,軟X 線帯域で高い感度を誇るBI-CCD の特徴を最大限発揮させられない状況である。そこで本研究では,OBF に替わる新技術として,可視光・紫外線遮断フィルム(OBL:Optical Blocking Layer)を,直接BI-CCD 表面に最適の厚さでコートする技術を確立し,安全で確実なX 線CCD の可視光・紫外線遮断技術を実用化し,大面積のBI-CCD とOBL を組み合わせ,大面積・超高感度X 線CCD を実用化する。平成25年度は,可視光・紫外線遮断フィルムをBI-CCDにコーティングする前に,①ポリイミドとアルミニウムからなる薄膜,②ガラス基板にポリイミドとアルミニウムの両方をコーティングした可視光・紫外線遮光フィルムの試作品をそれぞれ製作した。①はSPring8においてX線透過率を測定し,OBLの膜厚の評価実験が実施できることを実証した。②は,可視光透過率を測定したところ10^-4程度であった。我々の技術でアルミニウムを140nmコーティングすれば可視光透過率を目標である10^-4程度に抑えられることが分かった。ただし,設計値から予想した透過率よりも1桁程度高い結果であり,原因については次年度検証する。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度には,①可視光・紫外線遮光用フィルム(OBL)の試作品を製作すること,②試作したOBLの可視光透過率を測定すること,③OBLのアルミニウムのコーティング方法と厚みを決定すること,の3点を目標としていた。これら3点のうち,①②については実施した。③については,コーティングしたアルミニウムの厚みから予想した可視光透過率よりも1桁高い結果であり,その原因の検証を次年度に持ち越すこととした。アルミニウムをコーティングする際の,工程を見直し,対応策についても方針を立てており,次年度に早速実施する。以上のように,おおむね順調に遂行しており,問題点についても対応方法の検討ならびに方針も立てて,計画通り進めていると考えている。
平成26年度には,「達成度」にも記載したように,まず,OBLのアルミニウムのコーティング方法を見直し,新たにOBLの試作品を製作する。その試作品の可視光透過率を測定し遮光性能の実証実験を行う。また,宇宙でOBLを実際に使用するためには,原子状酸素によるポリイミドの腐食を防ぐ必要がある。そこで,平成25年度に製作した試作品を用いてに原子状酸素を照射し,可視光・紫外線透過率の測定,熱光学定数の測定を行い,発生するピンホールの量,サイズなど定量的な評価を行う。いくつかOBLの試作品を製作しながら,耐浸食性が高いアルミニウムとポリイミドのコーティング方法を決定する。また,OBLを実際にコーティングしたBI-CCDの試作品を製作し,エネルギー分解能などのX線に対する基本的性能を評価する。
ポリイミドとアルミニウムからなるOBLのコーティング方法を改良した試作品の製作が予定よりも遅れ,今年度の予算を繰り越して,次年度(平成26年度)に費用を支出することとしたため。今年度繰り越しを行った予算については,平成26年度にOBLの試作品ができ次第使用する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (32件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Proceedings of the SPIE
巻: 8859 ページ: 88590- 88599
10.1117/12.2023267
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A
巻: 731 ページ: 160-165
10.1016/j.nima.2013.05.052
Physics - Instrumentation and Detectors
巻: accrepted ページ: accrepted
2013arXiv1312.2343T
http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~ft13049/kogakuin/research.html