研究課題
本研究では,現在観測を続けている日本の「すざく」,欧米の「チャンドラ」,「ニュートン」を凌駕する広視野を持つ宇宙X線望遠鏡搭載を目指し,大面積・超高感度X線CCD を開発することを目的としている。 本研究の最も本質的な課題は,可視光や紫外線の遮断対策である。従来の宇宙X線観測用CCD(X線CCD)と同様に,大面積の裏面照射型X線CCD (BI-CCD) の全面を覆うような薄膜(OBF:Optical Blocking Filter)をBI-CCDの前面に装備すると,打ち上げ時の振動に対する耐久性を維持するために,軟X線にとって不感感層となる薄膜の厚みを厚くすることになる。結局,1keV以下の軟X線帯域で格段に高い感度を誇るBI-CCDの特徴を発揮させられない。 そこで本研究では,OBFに替わる新技術として,可視光・紫外線遮断フィルム(OBL:Optical Blocking Layer)を,直接BI-CCD表面に最適の厚さでコートする技術を確立し,安全で確実なX線CCDの可視光・紫外線遮断技術を実用化し,大面積のBI-CCDとOBLを組み合わせ,大面積・超高感度X線CCDを実用化する。
3: やや遅れている
平成26年度はOBLのアルミニウムのコーティング方法を見直し,新たなOBLを試作した。その試作したOBLにおいて,これまで製作していたOBLと同程度にピンホールが生じていた。ただし,ピンホールの数と大きさについては,CCD自身に生じるホットピクセルと同程度のものであったため本研究を進める上で問題ではなかった。しかし、平成26年度に,このピンホールの数が,OBLによる可視光の遮光という観点で問題になる程度にまで,経年的に増加することが新たに分かった。このため,平成26年度は,ピンホールの経時変化の対策が新たな開発項目として加わり,研究の進度が遅れる原因となった。一方で,OBLをコーティングしたBI-CCDを用いて,エネルギー分解能などのレスポンスの測定については,KEK-PFにおいて予定通り実験を実施した。Siの吸収端前後のエネルギー帯域で、単色のX線を10eV程度のエネルギーステップで緻密に照射することができたため,測定結果から,BI-CCDの完全空乏化している空乏層にも、厚みが数十[nm]程度の不感層があることがわかり,BI-CCDに関する新たな知見を得た。
前年度である平成26年度には,単層のアルミニウムをCCDの表面にコーティングした場合,アルミニウムに数um程度の大きさのピンホールが生じ,そのピンホールの数が経年変化で増え,サイズも大きくなることが分かった。OBLの実用化に向けて,このピンホールの経年変化は解決べき新たな課題となった。ピンホールが形成される原因の候補としては,OBLを成膜する際のBI-CCD素子の表面の洗浄等の条件によるものや,アルミニウムがシリコン格子に拡散してしまうことがあげられる。そこで,前者について成膜前の製造条件の見直しを行う。また、後者に関しては、従来法では,シリコンからなるCCDへアルミニウムを直接コーティングしていたが,アルミニウムとシリコンの間にチタンやプラチナの層を入れる対策を予定しており,今年度は,チタンかプラチナを加えたOBLのサンプルを試作する。そのサンプルでピンホールの減少,経年変化の抑制効果を確認できれば,アルミニウムとCCDにコーティングし,ピンホールの有無の確認,可視光透過率の評価を行う。その上で,X線CCDに入射する可視光の強度を10-4[%]程度に抑えるためにポリイミドの表面にコーティングするアルミニウムのコーティング方法を確立させる。
平成26年度に,新たな課題として見つかったOBLのピンホールを解決するために,今年度使用を予定した研究費を次年度へ繰り越し,その解決対策費とするため。
新たな課題となったOBLに生じたピンホールに対して,コーティング方法を変えたOBLの試作品を製作するための費用として使用する予定である。
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