研究課題
今年度は、本研究で開発するCCDの実用化に向けて「①X線に対する性能評価」と,「②宇宙線に対する耐久性」について評価実験を行った。①はKEKのフォトンファクトリーで計4回実施し,本研究で試作したCCDに0.2-3.5keVの帯域の単色のX線を照射した。評価項目は,衛星搭載品としてCCDで天体観測をする際に必要となる,エネルギー線形性,エネルギー分解能などのレスポンスと検出効率である。エネルギー線形性はHenkeのdata baseから予想したSiのK吸収端(1.85keV)と数eVずれた帯域で応答がエネルギーに対し連続的に変化することが分かり,昨年度打ち上げたひとみ衛星のCCDの応答関数にも反映させる。検出効率はCCD表面の不感層となるAlやSiのK吸収端も含め3.5keV以下の帯域で~1%程度の精度で測定を行い,ひとみ衛星のCCDの検出効率のレファレンスとして利用している。②は,放射線医学総合研究所において,軌道上で8年相当量の6MeVのプロトンを用いて放射線損傷実験を行った。損傷によって引き起こされる性能劣化の主原因となる電荷転送効率や暗電流の経年変化を評価し,劣化の度合いは、ひとみ衛星等に搭載したCCDと同等であることを確認した。これらの結果は国際学会で発表を行い、論文としてまとめる。また,本研究で新たに課題となったCCD素子にコーティングした可視光遮光用のアルミニウムにピンホールが生じる問題の対策を進めた。素子の表面処理に使用する薬液、コーティング前の洗浄方法などを変え,成膜時に発生するピンホールの数と,数の経年変化を調べた。現段階では,成膜時のピンホールの数を抑えることはできるが,継時的に増加することまでは十分に抑えるまで至っていない。実用化にはピンホール数の経年変化を防ぐことが不可欠であるため,次年度も引き続き検証実験を進める。
2: おおむね順調に進展している
今年度は,X線CCDのX線に対する性能評価に加えて、新たに放射線損傷実験を行い,開発しているX線CCDの実用化に向けた評価実験の大きな課題を1つクリアした。ただし、CCD素子にコーティングする可視光遮光用のアルミニウム層に生じるピンホールについては、ピンホールの発生を抑制する技術課題が残り,実用化に向けて平成28年度には解決したい。
CCD素子にコーティングするアルミニウムに生じるピンホールの発生が、本研究の1番の課題である。前年度に引き続き,ピンホールの発生を抑制する手法を検討し,CCD素子に可視光遮光用のアルミニウム層をコーティングする技術を確立する。また,軌道上での放射線損傷対策である電荷注入法を用いて,試作したCCDの性能の劣化がどの程度抑えられるか定量的な評価を行う予定である。また、本研究は、今年度が最終年度であり、これまでの研究で得られた結果をまとめ,国内外の学会や論文で発表を行う。
本研究を遂行する中で、CCD素子にコーティングする可視光遮光用のアルミニウム層に生じるピンホールが新たな課題となった。このピンホールの発生を抑制する技術課題を解決することにも注力するする必要があると判断し,今年度の予算を繰り越し、試作品の製作費用に充当する。
ピンホールの発生メカニズムは、アルミをコーティングする下地の表面構造にも依ることが分かってきている。そのため、下地として、安価なガラス基板を使うのではなく、CCDと同じSi基板を選定する必要がある。また、ピンホールから漏れる可視光がCCDへ与える影響を定量的に評価するには、コーティング方法を選定した後、実際、CCD素子にコーティングを行い、CCDに可視光を照射し、評価実験を行う。そのため、繰り越した予算で、コーティングを行った試作品のCCD素子を購入する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (32件) (うち国際学会 7件)
Journal of Instrumentation
巻: 10 ページ: 1-8
10.1088/1748-0221/10/06/C06005
Proceedings of International Workshop on SOI Pixel Detector (SOIPIX2015)
巻: C15 ページ: 1-9
巻: C15 ページ: 1-5
Nuclear Inst. and Methods in Physics Research, A
巻: 794 ページ: 255-259
10.1016/j.nima.2015.05.008
Proceedings of the SPIE
巻: 9601 ページ: 10pp
10.1117/12.2190808