研究課題/領域番号 |
25287047
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中條 達也 筑波大学, 数理物質系, 講師 (70418622)
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研究分担者 |
三明 康郎 筑波大学, 副学長・理事 (10157422)
杉立 徹 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80144806)
稲葉 基 筑波技術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80352566)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クォーク物質 / 原子核衝突実験 / LHC加速器 / 前方方向の物理 / ALICE 実験 / 粒子検出器 / 電磁カロリメータ検出器 |
研究実績の概要 |
本研究では、CERN 研究所・LHC-ALICE 実験における次期検出器高度化計画の一つである前方光子検出器 (FOCAL) 用の高速データ読み出しシステムを開発する。2年目にあたる本年度では、実際の FOCAL 試作機を用いて CERN PS/SPS 加速器ビームによるテストビーム実験の実施を中心に、以下の研究開発を行った。
(1)まず筑波大学にて、FoCal 検出器用テストベンチを構築した。これにより、昨年度、米国オークリッジ国立研究所から譲り受けた FoCal を暗箱(筑波大製)に設置し、LED パルス、宇宙線、レーザー、放射線源等の様々なソースを用いて、読み出しテストが可能となった。また読み出し系には、CERN RD51 グループが開発した、APV25 チップ (128 ch アナログシグナル)および SRS (Scaleable Readout System) を用い、mmDAQ ソフトウェアを用いた読み出しに成功した。 (2)2014年9月と11月に、それぞれ CERN PS 加速器、SPS 加速器を用いた FoCal 検出器の性能評価のためのテストビーム実験を行った。大学院生5名、スタッフ2名が現地でのビーム実験に参加した。ユトレヒト大学の研究グループと共同で実験を行い、それぞれ異なるタイプのFoCal 検出器をテストした。我々の検出器は、ノイズの問題が残るものの、初のビームデータ取得に成功し、初期成果を得た。これらの結果を日本物理学会(2件)と日米合同物理学会 (Hawaii 2014) (1件)にて報告した。 (3)来年度に向けて、CERN-RD51 研究グループとの共同研究に着手した。次世代高速読み出し装置「VMM チップ」とその周辺読み出し系を FoCal 専用に開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FoCal 検出器の読み出しシステムの構築に成功し、また2回の加速器ビームを使った実験により、検出器に応答、電磁シャワーの検出、シグナルの読み出しが正常に行えることを確認した。来年度以降は、検出器からのノイズの除去、および新規高速読み出しシステム (VMM2) を採用し、本研究の最終目的である FoCal 検出器用の高速読み出しシステムの構築を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度では、2015年10月から11月にかけて、再度 CERN PS, SPS 両加速器を用いたテストビーム実験の実施する。前回のビーム実験ではできなかった次の測定を行う。1)別タイプの FoCal 検出器 (MAPS, ユトレヒト大製)とのシグナル同期、2)電源やアナログシグナル・サムボード上でのノイズを軽減し、エネルギー分解能の向上。 なお、このビーム実験での読み出しには、既存の APV 25 チップと SRS システムを使用する。
同時に、6月頃から CERN の RD51 グループと共同で、次世代高速読み出しチップ VMM の開発に着手する。大学院生1名を長期でCERN 研究所に派遣し、現地の研究者と共同で開発にあたる。更に、ALICE 実験内における FoCal 検出器設置提案書 (LoI) の承認を7月頃に行い、本実験開始に向けたプロジェクトの推進を我々が中心となって行う。
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